goo blog サービス終了のお知らせ 

デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

惑星

2006-09-03 07:11:39 | Weblog
 冥王星が惑星から外されたそうだが、女性に星が綺麗ね、と言われても星の輝きではなく、胸元のネックレスの輝きに視線がいくほうだから、どうにも関心が薄い。「スイキンチカモクドッテンカイメイ」と語呂で覚えたことを思い出すが、これも「富士山麓にオオム鳴く」と同様、日常使うこともない。除外されたことによりどのような影響があるのか解らないが、天文学も惑星を定義できるほどに進歩したということだろうか。

 エリック・ドルフィーの60年の初リーダー・アルバム「Outward Bound」が、国内盤で発売された時のタイトルは「惑星」だった。最近発売のCDは原題のタイトルのままだが、邦題のほうが新鮮な響きがあるように思う。ジャケットの緑を基調としたシュールな絵は、ニュー・ジャズというレーベル名と相俟って未知の新しいジャズを想起させる斬新なデザインだ。トレードマークの顎鬚も印象的で、髭も生え揃わない高校生の頃には随分憧れた。ジャズ喫茶の10店に1店は、このドルフィー髭を蓄えたマスターがいて、このアルバムをリクエストすると、コーヒーが一杯サービスされることになっている。(笑)

 このアルバムでは、アルト・サックスの他フルート、バス・クラリネットを吹いている。「グリーン・ドルフィン・ストリート」は、恐らくバスクラでは本格的な演奏と思われるが、アルトでは表現できないアイデアをバスクラで具現したものであり、フルートもまたドルフィーが美の観念を追求するために選んだ楽器なのだろう。何れも強烈な個性が滲み出ている傑作だ。竹内直さんのソロ・ライブでバスクラという楽器を間近にしたが、その大きさと深い音に強く惹かれた。ドルフィー以降この楽器を手にするジャズマンが少ないのは残念だ。

 惑星群の歴史からすると、発見されてから76年の冥王星が惑星とされた時期は短い。ドルフィーもまた36年という短い生涯だった。この初リーダー・アルバムから最後の作品「ラスト・デイト」まで冥王星のようには外せない作品群が並んでいる。