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徒然なるままに…なんてね。

思いつくまま、気の向くままの備忘録。
ほとんど…小説…だったりも…します。

捨て犬ラックの物語…第十二話 「ラックを捨てたあなたへ…。」

2007-11-09 13:48:31 | 捨て犬ラックの話
 それはまったくの偶然だった…。
家を出てから四年目ぐらいになるだろうか…ほとんど実家に帰れなかったdoveだが…その夏には…久々に何日かを実家で過ごす機会ができた…。

 ラックは病気と老齢とで…最早…大好きな散歩にも行けなくなっていた…。
ビーグル種の寿命は約12年…拾われた時が1歳をとうに越していたのだから…ラックはすでに13~14歳…。
あれほど食通りが良かったのに…食欲もない…。
静かに寝て過ごしていた…。

 このところ毎朝…雨戸を開けた時にラックが生きているかどうかを確認するのが…オカンの日課になっていた…。
ラックが動くのを見ると…少しほっとした…。
発病したのはdoveが家を出る前のことだから…いつかは…という想いはずっとあった…。

 或る夜…オカンは夢を見た…。
目の前に観音様の御姿が現れる夢だった…。

 その朝…雨戸を開けると…ラックが死んでいた…。
奇しくもdoveが実家に戻っている…その間に…ラックは旅立った…。
居合わせたお蔭で…doveはラックと最後のお別れをすることができた…。

ラック…お疲れさま…家の警備のお仕事偉かったね…。

 動物も供養してくれるというお寺から…お迎えが来て…ラックの遺骸を運んでいく…。
玄関先で手を合わせ…居合わせた家族だけで送り出した…。

 鼻黒の時は家族で地域の火葬場まで運んだのだが、動物はまとめて焼却処分されるらしく供養らしい供養をしてやれなかったので、ラックの場合はちゃんと供養してくれるというお寺を選んでオカンが連絡した…。

 過去に一度も行ったこともないお寺で…どんなところかも知らない状態だったのだが…驚いたことには…オカンの夢に出てきたのと同じ観音様が…そのお寺にあった…。
そんな不思議な現象に出会ったせいか…観音様の夢を見た時刻が…ラックの死んだ時間だったのではないかと…オカンは今でも考えている…。

後日…家族でお寺に行って…ラックと鼻黒の供養をした…。
随分昔のことで…記憶も薄れてはいるが…なかなか綺麗なお寺であったことを覚えている…。

 生後一年余りで捨てられて…飢えと寒さで死にかけたところを救われ…押し掛け犬でありながら…家族に怪我を負わすほど噛み付き…それでも大事に可愛がられて生きてきた歳月を…ラックはどう感じていたのだろう…?

 もっと散歩がしたかったとか…もっと美味しいものが喰いたかったとか…そんな不満もあったろうか…?
それでも…dove家としてはラックにしてやれるだけの精一杯のことはしてきたと思う…。

ラックは家族だった…。
ちゃんとお役目も果たしていた…。

 たった一年余で失われるはずだった捨て犬ラックの命…けれど…その後の12年半を存えて…家族に話題と笑顔と安心を与えてくれた…。
噛み付きはしたけれど…それはおそらく…過去に何らかの原因があるのであって…彼のせいではない…。



 動物は飼い主を選べない…。
ラックを捨てて行ったあなたは…捨てたことを後悔しただろうか…?
それともいい厄介払いができたと喜んだだろうか…?

ラックにも人間以上に純粋な感情があることを知っていただろうか…?
置き去りにしたあなたをずっと忘れなかったことをご存知だろうか…?

ラックが…自分を捨てたあなたを想って…毎朝…御飯も食べずに鳴いたことをどうか忘れないで頂きたい…。
あの凍えるような寒さの中で…飢えながら…穴を掘って存えて…あなたをずっと待っていたことを知って頂きたい…。

あなたが食べさせてくれたコンニャクやカレーの味を覚えていたことを心に留め置いて頂きたい…。
ラックは心底…あなたを愛していたのだ…。
たとえ死の間際に…あなたと再会したとしても…ラックはあなたを覚えているだろう…。

 動物を飼う…ということは…買う…のではなく…その命を預かる…ことだと思う…。
預かった命を…どうか…大切に想って欲しい…。

 もしかすると…ラックを捨てたのは…あなたが生きていく上で…どうしようもない立場に追い込まれてのことだったのかもしれない…。
できれば…そうであって欲しいと願う…。

要らなくなったから…では…あまりにラックが可哀想だから…。


ラックは…祖母の月命日に拾われて…命日に旅立った…。
眼には見えない力が働いて…家族とラックを引合わせてくれたのだと…doveは信じている…。





完…。






この物語を読んでくださる方が…捨て犬や捨てネコについて少しだけ…興味を持ってくだされば幸いです…。


この物語を書く決心をさせてくれた記事です。

http://blog.goo.ne.jp/wildboar_36/e/a86629d45b6e4487bf2eecdc41ab92b0