明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



世田谷文学館の館長に亀山郁夫さんが就任された。以前、新潮文庫のカバーをやらせていただいた。この時、以前から一度試みたい、と思っていたことを提案した。それは著者と、作中に投場する人物との共演である。 ドストエフスキーは実際の写真を見ると、大金をスって茫然としているかのように口が半開きで、気を確かに、とアンモニアを嗅がせ、若干文豪感を盛った。肖像画を見ると、画家達は皆私と同じことを考えたな、と思う。それと顎髭は、実際はこんな密でなく、ポヤポヤだが、粘土製の都合上濃くしたが、今なら毛を貼り付けただろう。 旅のイメージから、亀山さんには編集部に入手してもらった鞄に旅支度調で、新潮社内の窓際に立っていただいた。背景は渡辺温『赤い煙突』を流用した。病弱な少女がベッドから見える窓外の3本の煙突を、両親と自分に見立てて毎日眺める。それをロシアのイメージで寒々とした針葉樹林に変えた。ドストエフスキーの座る椅子の背もたれは、近所で朝定食を食べたついでに背もたれの角を撮らせてもらった。


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