かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

失せもの  その2

2013年10月26日 | エッセー
 先日、娘と待ち合わせて美術館に行った。やってきた娘を見たら、雨は止んでいるのに長傘を持っている。おまけにその傘ときたら私が出先で雨に降られた折、リサイクル屋に飛び込んで100円で買った物だった。鑑賞する速度が娘とは違うので、先に帰るという娘にくれぐれも傘を忘れないよう言い聞かせて入り口で分かれた。帰りに念のため傘立てを覗くとしっかり傘が残っていた。
 どうするかしばらく迷った。100円の傘だから放棄したかった。黙って帰って後から傘札を送り、傘は捨ててくださいと書いたら迷惑だろうか。傘を取りに来てくださいと言われても困る。結局、正直に申し出て、合い鍵で傘を出して貰い、帰宅してから鍵を送付した。傘札の送付料は120円だった。

 ここのところ雨続きだが、この夏も雨が多かった。着物専用にしているお気に入りの日傘があるのだが、6月7月とさす機会がなかった。8月の下旬になってやっと日傘のお出ましだと思ったが、どこを探してもない。お気に入りだったので他の日傘に買い換えるのは嫌だ。今夏この日傘を差して出た記憶がないのだが、念のため着物で出かけた場所5カ所ほどに聞いてみたがどこにもなかった。どこへ消えてしまったのだろう?

 消えたといえば、夏物の帯揚げが10枚ほど全て消えてしまった。冬物と入れ替えようとして和箪笥の引き出しを開けて気がついた。夏冬両方を入れるとあふれるようになったので、冬物は押し入れにしまっていたのである。幾枚かがなくなったのなら、使用した後アイロンがけしようと別にした可能性がある。しかし今夏使用していない帯揚げだって幾枚かはあるのに、全てがないというのはどういうことだろう。これは病気の入り口だろうか?

 しかし中には出てきたものもある。お気に入りのセーターが長年どうしても見つからなかった。
お気に入りだから捨てるはずはないのに家中探してもないのだ。家で手洗いしていたが、万一クリーニングに出していても札があるはずだ。電話だって掛かって来るかもしれない。どうもそういうこともなく、箪笥にもクロゼットにも押し入れにもない。ほとんど忘れかけていた去年になってひょんなところから出てきた。ネパールで10日間ほど背負って、その後高尾山のふもとで安いリュックを買ってから出番の全くなかったリュックの底に入っていた。買い換えた時、移し忘れたものとみえる。実に9年間リュックの底に眠っていたことになる。 

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