かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

馬場あき子の外国詠95(スペイン)

2018年10月08日 | 短歌一首鑑賞
馬場あき子の外国詠11(2008年9月)
   【西班牙3オリーブ】『青い夜のことば』(1999年刊)P58~
   参加者:F・I、N・I、T・K、N・S、崎尾廣子、T・S、
       藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:渡部慧子 まとめ:鹿取未放


95 アンダルシアのユーカリは汚れし手を垂れて泣けてくるやうなやさしさにじます

     (レポート)
 サハラ砂漠から季節風が吹き、雨量の少ない地であるから「ユーカリは汚れし」は想像できる。だが葉ではなく「手を垂れて」としている。即物的に葉を垂れてではおもしろみがないからであろうか。手を詠い込むことの多い作者の単純な比喩とも思えない。私たち日本人と違って手足の長いアンダルシアの人々を暗示させるべく「手を垂れて」と言葉を置いたように思われる。ここから作者の心はひそかに人々に向けられ、アンダルシアの長い時空の中のつかのまを生きる人々への目差しとなる。その陰影深い風貌、暑い地に暮らすゆえの気怠い感じ、また攻撃型よりは受動型であろう民族性などを「泣けてくるやうなやさしさにじます」と詠っている。それは対象に距離を置かない作者の心の表白であろう。(慧子)

          (当日発言)
★レポーターは少し考えすぎでは。馬場は動物にも植物にも人間のようなシンパシーを持つ人なの
 で、この歌もユーカリに対して人間のようにゆかしさを感じているのでしょう。(鹿取)

      (まとめ)
 ユーカリの木は六年で成木になるそうだ。1メートルの成木もあるが、高いものでは100メートルにも育つという。多くの種類があるが、ここでは柳の葉に似た細長い葉を垂れる種類なのだろう。乾燥地にあって水分不足で葉が垂れているのかもしれないし、土埃で汚れているのであろう。
 下の句は八・八とたっぷりにうたわれて、こちらの情を誘い込むようだ。「やさしさにじます」の主語はユーカリの木であろう。(鹿取)


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