フランチャイズ開業&読書日記・・・どこまで行くの?

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オリンピックの身代金(上)(下)  (角川文庫)

2011年10月02日 22時36分34秒 | 書評 小説系
オリンピックの身代金(上) (角川文庫)
クリエーター情報なし
角川書店(角川グループパブリッシング)


オリンピックの身代金(下) (角川文庫)
クリエーター情報なし
角川書店(角川グループパブリッシング)


「空中ブランコ」で直木賞を受賞した奥田さんの小説は
これまで読んだことがなく、これが僕の奥田作品デビューです。

アジアで初の東京オリンピック開催の陰で
オリンピック開催を阻止しようとするテロリストと
何とか逮捕しようとする刑事との死闘を描いた作品です。

戦後から一気に回復を目指し
高度経済成長に沸く熱気ある社会の一方で
ひたすらに貧しい東北地方との格差を
鮮明に描いている点が特徴的です。

オリンピック開催という国家事業の前では
事実を公表しないことも許されるという権力の論理に
違和感を覚えながらも最後まで読み終えました。

ネタバレになるので、
結論はいいませんが、
読後感はすっきりしない終わり方でしたね。

貧しい東北の農村出身の東大生がなぜテロリストになったのか、
その理由に思い入れが入ってしまいました。
オリンピックに限らず、国家的事業に浮かれ
大切な何かを見失ってしまうのは国民性なのでしょう。
オリンピック開催を是が非でも堅持しようとする警察職員の側に
感情移入出来なかったからかもしれません。

3・11の震災以後、原発事故において
国家権力が一体何を守り、
マスメディアが何を報道してきたのかを
私たちは知るところとなりました。
メルトダウンや放射能の拡散など
政府やマスメディアは当初
国民に対して真実を伝えず、
また伝えることができませんでした。

47年前の東京オリンピック当時の出来事ではありません。
47年後の現在でも、この国では本当の真実は
国民に知らされないままなんだなぁという
感慨を残念ながら持っています。


小説の中で、オリンピック開催という国家的事業を目前にして
国民全体が浮かれた状態の中で、
ひとり、見過ごしてはいけないものを見せつけるために
国家に立ち向かっていくテロリストの存在を
単純に「悪」だと決めつけられないところに
この小説のミソがあります。

この小説がフィクションながら
あまりにも真に迫っているがゆえに
かえって気が滅入る印象が強く残りました。

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