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詩人・そらしといろのブログ~お仕事のお知らせから二次創作&BL詩歌まで~

「言絵絵言Ⅲ~ことえ えこと~」展が終了しました

2020-10-04 12:30:51 | 主な仕事の記録
銀座の柴田悦子画廊さんにて、9月21日(月)~27日(日)まで開催された、「言絵絵言Ⅲ~ことえ えこと~」展が、終了しました。
コロナがなかなか落ち着かない状況でしたが、たくさんの方にご覧いただけて、とても嬉しかったです。
ご来場いただいた皆様、有難うございました。

参加作家の印象的だった作品について、少し書いておきます。

【言・江尻潔 × 絵・本田和博】
本田さんは昨年、私と組んで絵を描いていただいた画家です。
今年は詩人の江尻さんと組まれて、江尻さん特有のひらがなの響きを生かした絵が仕上がっていました。
本田さんは白い背景を苦手とされていたようですが、今回の4点の作品は、どれも白い背景に描かれていたことも驚いたことでした。
江尻さんのひらがなの原始的な言葉の雰囲気に合うように、裸体の男女、風景画を描かれていました。

【言・田野倉康一 × 絵・越前谷嘉高】
絵を担当された越前谷さんは、今回初のご参加の美術家です。
4点の作品のうち、2点は朱色をベースとした絵画、1点はやはり朱色を土台に塗られた小さなオブジェで、その色合いが田野倉さんの詩の雰囲気と合っていました。
どこか郷愁を感じさせる色合いで、はっきりとした朱色が夕焼けの時間帯を想像させるからでしょうか。
4点の作品のうち、1点は映像作品だったことも印象に残りました。

【言・中村高朗 × 絵・黒須信雄】
詩を担当された中村さんは、今回初のご参加の詩人です。
黒須さんといえば、1色を基調としたうねうねとした蛇や糸の束を思わせるような画風が持ち味の美術家ですが、今回は色合いがカラフルなうねうねたちで、しかもイソギンチャクや真珠を抱いた貝のような新たな動きのある絵を2点、描かれていました。この作品に寄せられた詩は、製本された本の1頁として展示されていたのも印象的でした。
もう2点の作品は、中村さんの詩に合わせて錬金術を想像させるオブジェのコラージュ作品といったものでした。石や歯のモチーフを使われて、小箱に入っていました。

【言・そらしといろ × 前本彰子】
美術を担当された前本さんは、今回初のご参加の美術家です。
作品は具体的に写真をつけて、簡単に解説を添えていきます。


タイトル「絶」 詩→美術
一番最初にやり取りした作品です。
「片腕を失くしたような」から始まる詩のイメージを、具体化していただきました。
原稿用紙を額縁に収めて、よく見ると、腕のオブジェの布の下には白い蝶々が群がっています。
この蝶々は蛍光塗料が塗られていて、灯りを消すと黄緑に光り、一匹だけ青く光る仕掛けになっています。


タイトル「結」 美術→詩
二番目にやり取りした作品です。
前本さんから花嫁姿の人形が送られてきて、それを元に詩を書きました。
「晴れた海から来た」から始まる詩を、細長く切ったオーガンジーという薄い布に1行ずつ書いて、ドレスに縫い付けられています。
テグスを頭部に縫い付け、天井から吊るすという展示。室内の空気の揺らぎで、常にくるくると意思を持ったように動いていました。
画廊の柴田さんから「ゆいちゃん」と呼ばれて、愛された作品です。
「ゆいちゃん」は人形なので、運がよければ人間よりも長く残ってゆく、永遠の命の象徴なのだなと気づきました。


タイトル「瞬き」 美術→詩
三番目にやり取りした作品です。
前本さんといえば、この作品のようなはっきりとした色合いが特徴的な美術家です。
4点のうち、この作品が一番、普段の前本さんらしさが出ていると思います。
これは美術作品と詩作品を別々で展示してみました。
「神々もたそがれている」と始まる詩で、世界の終わりと再生をイメージした詩を書きました。


タイトル「息吹き」 詩→美術
一番最後、四番目にやり取りした作品です。
三番目の詩と対になるようなイメージで、詩を書きました。ゆっくりとした再生を想像しました。
原稿用紙が百葉箱のような小箱に収められています。
原稿用紙の手前には薄い布が貼られて、目を凝らして見ると、詩が読めます。

普段はカラフルな色彩感覚をお持ちの前本さんが、全体的には白を基調とした作品を作られたことに、詩とコラボレーションした化学反応が見られると思います。
わたしもまた、詩作品としてはかなり短く、10行以内で詩を書く経験ができました。世界をよりぎゅっと、濃縮する言葉の配置を勉強できたと思います。
とても貴重で有意義な時間を過ごすことができました。

改めて、今回もお誘いくださった企画者の黒須さん、コラボしてくださった前本さん、温かく見守ってくださった画廊の柴田さん、参加作家の皆さまに御礼を申し上げます。