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詩人・そらしといろのブログ~お仕事のお知らせから二次創作&BL詩歌まで~

野川朗読会8が終了いたしました。

2017-07-03 11:45:59 | 主な仕事の記録
昨日、野川朗読会8が無事に終了いたしました。
暑いなか、ご来場いただきました皆様、どうも有難うございました。

当日、常連の出演者である伊藤浩子さんが急きょご欠席となりましたが、今年は特別ゲストに新川和江さんがいらっしゃいました。
さて、野川朗読会と言えば、朗読の前に出演者が一言、お題に沿ったお喋りをします。
今年のテーマは「私は最近、コレで笑った(ワライカワセミには話すなよ!)」でした。
皆さんそれぞれに、くすっと笑ってしまうようなエピソードをお話されていました。
今回はそのエピソードを言い終わったあとに、童謡「わらいかわせみに話すなよ」の後半部分を皆で合唱しました。
司会役の一色真理さんのギター伴奏つきで、なんだかホッとする時間でした。

以下、簡単なレポートです。

特別ゲストの新川和江さんによる朗読は、永瀬清子さんの詩「私は地球」と「あけがたにくる人よ」でした。
新川さんが選ぶとしたら永瀬さんの代表作は「私は地球」、好きな詩は「あけがたにくる人よ」ということでした。
「私は地球」は、わが身と女性性を地球になぞらえた大胆な作品で、発表された当時はなかなかに衝撃的だったようです。
一方、「あけがたにくる人よ」は、叶わなかった恋の詩であり、どこか懐かしく寂しい雰囲気が素敵です。
新川さんの朗読によって、二つの作品のちがいが伝わりつつ、けれど、なにか大らかな気配は共通しているようでした。
新川さんと永瀬さんの思い出話も拝聴できて良かったです。

今年の、長野まゆみさんと田野倉康一さんと私での対話の話題は、「在りし日の野川の風景」でした。
長野さんと田野倉さんは保育園時代からの幼なじみで、野川との付き合いも深いです。
小学校や中学校の地面を掘れば湧き水も縄文土器も出る、そんな時代があったというお話をお二人から聞くと、長野さんの小説『野川』に出てくる国語教師の河井先生のお話のようで、私が知らないはずの景色なのに、その現場を見たような気がしました。
野川周辺の景色としては、長野さんが中学生頃、少し小高い場所を走っていた西武線の砂利運搬路線へ、夕暮れ時、木製の貨物列車がオレンジ色の明かりを灯しながら通過していく様子が、長野さんにとっては宮沢賢治の”銀河鉄道”だったそうです。
本当は、線路の手前と向こう側にも、ある意味では余計な景色があるはずなのですが、そこを排除して線路だけを切り取る長野さんの視界を、田野倉さんが「彼女が小説家になった理由がわかる。」とおっしゃっていたのが、興味深かったです。
私自身は、まだ本物の野川を見たことがないのですが、かつて野川が、白と緑を混ぜたようなどぶ川だった景色が、私の身近にある用水路の色合いに似ていて、(あぁ、知っている、生活排水と合流したあの不気味な色!)と、一人納得していました。

詩の朗読も、小説の世界も、語られる言葉や印刷された言葉だけで想像を広げていくことの楽しさ、面白さ、難しさを再確認した一日でした。