BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

SUPER SIX STAGE 2

2010-04-23 23:06:03 | Boxing
アルツール・アブラハム VS アンドレ・ディレル

ディレル 11ラウンド失格勝ち

考察 ~ディレル~

サウスポーで戦ったのは相手の左フックへの対応方法で、
実際に肩口をかすめさせはしたものの顔面には届かせず。
また、リードとなる右が常に先手で打て、牽制だけではなく
突き放すことにも有効だった。
side by sideのフットワークは相手のガードの形からして
視界の外へ外へまわる感じになり、
ブロックの上から脇腹、ストマックまで面白いようにヒットできた。
もともとのリーチ差、身長差以上に距離を制し、
自分のパンチは面白いように当たるが、相手のパンチはかすりもしないというのは
打たせずに打つというSweet Scienceのepitomeだった。
さらにフットワークも申し分なく、前後左右に傾けた重心を残しながらスウェー、
そしてカウンターでノックダウンを2度記録(と言っておく)。
一皮むけたのか、それともフロッチは実は見た目以上のさらなる強豪だったのか。
athleticismではcompatriotのウォードを超えていると評してもいいと思う。

素晴らしいとしか言いようのない出来だったが、
敢えて一つだけケチをつけたい。
なぜ逃げ切りを図ろうとするのか?
明確な形で勝ちが欲しいのは分かるが、
相手のファンまで自分のものにしてやろうという気概はないのか?
あの失神は演技だとくさす向きもあるが、
KOしなければ倒されることもあるのだ。
たとえそれが許されざる形であっても。


考察 ~アブラハム~

ミドル級時代の防衛相手にはサウスポーもフットワーカーもいたが、
それらを同時に、しかもハイレベルにこなす選手はいなかった。
まあ、そこらへんにいくらでも転がっているスタイルではないのだが。

ガードの上を打たせて距離を掴むという、現代ボクシングのトレンドと
正反対のボクシングでKOの山を築いてきたが、ついに限界か?
もちろん、階級が限界なのではなく、そのスタイルが、だ。
リードもなくフェイントもなく、パンチの重さと強さで相手を威嚇できたが
この相手は決して射程距離に留まってはくれなかった。
テイラーは打っては離れをしてくれたが、防御は結構ブロッキングに頼る傾向にあり、
結果としてパンチは届いたし当たった。
中盤以降はエンジンをかけざるを得ず、実際コーナー、ロープに詰めたが、
ここでもマトリックスでかわされた。
目で脅す、肩をぴくっと入れて反応させる、踏み込みで真っ直ぐ下がらせる、
ワン・ツーから切り返すなとevery trick in the bookを試したが、
手足のスピードだけでなく脳からの神経伝達速度でも決定的な遅れをとった。

あのスリップダウンの瞬間は完全に頭に血が昇っていたのだろう。
明らかに膝を屈しているのを見てから殴ってしまった。
バレラがマルケスをぶん殴ったのとはわけが違う。
というのはバレラは元々そのケがあるからだ。
唯一の救いは反則負けしたこと。
15ラウンドの試合なら俺が逆転KOしていたのにと、
弱者の道徳=ルサンチマンをたぎらせているに違いない。
お国のニーチェは感心しないだろうけれど。

PS.
混沌としてきたスーパーシックスだが、
よくよく見ると全部ホームの選手が勝っているわけだ。
となるとアメリカン対決は?
またヨーロピアン対決は?
そしてグリーンはジョーカーなのか、ボーナスステージなのか。
興味は尽きない。

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2 コメント

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ノックダウン (たかみ)
2010-04-24 00:35:58
ロープ際の攻防で、ディレルが、アブラハムから、カウンターを取ったと見られかねない二度目のノックダウン、あれはアブラハムの首筋にあたり、バランスを崩させたものでしたね。
対して、アブラハムはスリップと、ミス裁定されたが、ノックダウンも奪い、最後のディレルのスリップも、その前にアブラハムのパンチがあたっており、フェアな観点でみると、アブラハムは2度のノックダウンを奪い、ディレルは一度奪ったと言えない事もないと思いました。
しかし試合の趨勢には影響は無かったでしょう。あのアブラハムの攻防分離のボクシングスタイルの限界、そして亀ガードになっている間に、臆病な傾向のあるディレルが、段々リズムに乗り調子づき、アブラハムが無駄にポイントを吐き出してったのも、アブラハムにフラストレーションを溜めさせ、最後の反則に繋がったのかと思います。
しかしアブラムは非公式ながらノックダウンを奪い、ディレルに明白なダメージを与え、集中力を増して、ディレルを射程に入れ始めての終盤だったので、残念な幕切れです。
アブラハムは、ディレルの様な相手に、敵地で、戦った事によりそのボクシングスタイルの見直しに迫られているのではないか、と思いました。

しかし酷評はされましたが、フロッチはスリックスター相手に、五角以上に戦えていましたね。現在ライトヘビーで活躍している、パスカルにも勝っていますし、フロッチはコスタヤジューに通じる、awkwardながらもeffectiveなボクシングスタイルをもっているかもしれませんね。
今週の対ケスラー戦が楽しみです。
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Unknown (涼しい木星/管理人)
2010-04-25 18:38:03
たかみサマ - もともと誰が誰に勝っても、言い換えれば誰が誰に負けてもおかしくない企画でしたからね。試合内容に驚くことはあっても結果に驚きはありません。一つ危惧するならば、スーパーシックス終了後にはビュテを残して後は焼け野原だった、という展開でしょうか。事実、テイラーは潰されましたから。

私はフロッチを見るとチューよりもハメドが思い出されます。ケスラー戦はすごかったようで(観戦記はWOWOW放送後に書く予定)。あきらかにboxing abilityに優る相手に勝ってきたのはそのawkward & effectiveなスタイルによるものと考えます。
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