BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBCスーパーバンタム級タイトルマッチ

2010-04-30 22:39:05 | Boxing
王者 西岡利晃 VS 挑戦者 バルウェグ・バンゴヤン

西岡 5ラウンドTKO勝利

考察 ~西岡~

退く相手にジワリジワリとプレッシャーをかけながら
モンスターレフトを見舞う様は貫録の一言に尽きるが、
ラフに出てくる相手の一発を被弾するところはWOWFESの時と変わらない。
というか元々そういうタイプの選手だ。
2回に右を真正面からもらい、buckleさせられたが、
西岡の言葉を借りれば「ほう、そう来るかバンちゃん。もう倒す」ですかね。
KOは狙っていなかったというが完全に台本通りの台詞ですね。
呼び込んでの左炸裂が的中した時には、長谷川戦で低下した血圧が
sys110 / dia60 まで回復したよ。
右ガードを上げる意識が癖、習慣を通り越して身体に馴染み、
右の体側を軸に呼び込んで左を撃てるようになり、
さらに右ガードの位置から視界が狭くなるところを
反時計回りのステップで常に踏み込んで左を撃てる足捌きに転化できているのも
年齢に反した進化を証明している。
一発もらって火がつくのはメンタルの若々しさとも言えるが、
本人は楽しくても観ているこっちの心臓に悪い。
それにしてもリナレス陥落後のメインといい、
長谷川陥落後の放送といい、この男は常に我々をハラハラドキドキさせ、
そして常に期待にこたえてくれる。
大衆も知っただろう、日本にNISHIOKA(西岡ではない)あり、と。

リングサイドの大橋の呆然とした表情が印象的だったな。
内容次第では細野をもう一回Sバンタムに落とそうとでも皮算用してたんじゃないのかね?


考察 ~バンゴヤン~

ローブロー、バッティング、足の踏みつけと、
初回の様子見以降はあらゆる手を尽くしてペースをものにしようと試みた。
右もボディ、顔面と見事に決まり、日本のファンの心胆寒からしめる瞬間を生んだが、
振り回すパンチはこの王者の前では命取りだった。
フィリピンの伝統としてジャバーが出てこないが、
西岡をトラブルに陥れるためには上体を揺らしての強く正確なジャブ。
(そう、ウィラポンのような・・・)
これがたとえば強打を空振りした体勢からさらに力強く振ってくるタイプならば
衝突KO決着の目もあるが、飛びかかってから着地してのバランスがめちゃくちゃでは
「顔面に一発どうぞ」と言っているようなもの。
若さと野性味あふれるボクシングもいいが、
現代はスキル、テクニック、タイミング、スピード、スピリットが勝利に資する。

WBCバンタム級タイトルマッチ

2010-04-30 22:32:09 | Boxing
王者 長谷川穂積 VS 挑戦者 フェルナンド・モンティエル

モンティエル 4ラウンドTKO勝利

考察 ~モンティエル~

極限の神経戦と心理戦において徐々に劣勢に立たされながら、
それすらも実はゲームプランだったのか。
開始から少しナーバスに見え、実際に仕掛けては引かれ、
打っては外される展開に手を焼いていたように映った。
踏み込んでのパンチはステップで引かれるが、
単発の右を迎え撃つ左カウンターは4ラウンド前の時点で見切っていたのだろう。
実際にきわどいパンチが放たれる瞬間にもスウェーでかわしていた。
そこから左フックで牽制できたはずだが、
相手の学習&適応能力に敬意を表し、手の内を隠したまま唐突な、
しかし計算されたフィニッシュを演出した。
サウスポーがオーソドックスの右を切る角度としては申し分なかったが、
左足を残したのがトラップ。
相手は右斜め45度の引き腕から、自身は左斜め45度の前腕から左をぶつけあえば
前に出てる方が着弾は速いに決まっている。
効かせれば後は歴戦のキャリアとメキシカンエリートの本能で仕留めるのみ。
「科学者になって長谷川を解体する」の言葉が
偽りにあらざることを証明する見事な勝利だったと称えるしかあるまい。


考察 ~長谷川~

予想通りにジャブから組み立てる立ち上がりで、
そこに相手が左フックを重ねてくるのも定石。
意識的な大振りが目立つ相手に余裕を感じたか。
形としては前戦でペレスに喰らわせた左2連発、
まさかそれで自身が沈められることになるとは夢にも思わなかっただろう。
ジャブとバックステップ、威嚇のフェイントとカウンターと、
全ての歯車が噛み合おうとしていた瞬間だった。
まさか拍子木で気を抜いたとは考えられないが・・・
今となっては忖度するしかないが「カウンターで倒す」の意識に支配されていたようだ。
展開をコントロールできると思った瞬間におあつらえ向きの右、
スリッピングから左のカウンターと体が反応してしまったところに
左と左の正面衝突、そこに追撃をフォローする左をもらっては意識がトンでもしゃーない。
あそこで左手がロープに絡まず素直に倒れていればとも思ったが、
朦朧とする意識の中、キャンバスを舐めるのだけは拒否した王者の意地と受け取ろうではないか。

辰吉がウィラポンに敗れた時の比ではない。
川嶋がムニョスに敗れた時の無念さをも上回る。
自伝の書評をしようかと思ったが、しばらくはやめておこう。
今ちょっとTIA気味だわ。

PS.
ところでジミー・レノンJrは長谷川の戦績を48勝と紹介してた?
とても録画を見直す気になれないので確かめられない。