SARAのブログ

日々のことあれこれ

お向かいさん

2024-04-01 15:31:33 | テレビ
お隣の人が亡くなった。
小さな道を挟んでのお向かいの人。
独り暮らしのおじさん。
年齢は、はっきりとした年を聞いたことはなかったが、私達が越してきた
時で50代くらいだったので、もう70歳くらいにはなっていたのかもしれな
い。

私達が家を建てている時、家の出来を見に来ている時から、家の中から
出てきて、良く話しかけてくる人だった。
越してきてからは家に直接訪ねてきたりとか、そういうことはもちろん
なかったが、普段から会えば向こうから良く話してくることが多かったので、
存在感はそれなりにあった。
その家の周りには大きな木が多いので毎年落ち葉がウチの方まで落ちてきて、
秋からはその落ち葉の処理も大変だったが、借景を楽しませてもらって
いたし、家の横に緑が多いことはウチにとっては良いことだったので
「もう!落ち葉の掃除が大変だよ!」と嫌に思ったことはほとんどなかっ
たし、何より、そのお隣さんがいつも気にかけてくれていて、私が庭や道路の
落ち葉を掃除していると来て「いつもすみません」と何度も言ってくれた。
「そちらに(ウチの庭に)入って掃除するわけにもいかないのでね」と
申し訳なさそうに言ったり、道路の掃除をしている時は「こっちはウチで
やるから」と言ってくれたりして、ウチが感じている何倍もあちらは気に
してくれていたのがわかったのでそれほど嫌に感じなかったのかもしれ
ない。なのでこちらも言われるたびに「いいえ、気にしないでください、
私達も紅葉を楽しませてもらってるんで」と言ったりしていた。それでも
毎回のように「すみません」と言ってきてくれた。
そう言うと、すごく謙虚な人かと想像されるかもしれないが、決して謙虚
な人ではなく、声も大きく誇示するような物言いも多かったので、プライ
ドがちょっと高そうだなぁという感じの人ではあった。
なので正直言うとそれほど好感を持っていたわけではなかったので、時と
場合によっては彼が家から出てくる気配を感じると話しかけられるのが
ちょっと面倒で、ソッと家の中に逃げたこともある。
それでも20年ちょっと近所の中では良く話す方ではあったのでそれなりの
情はあったし、越してきた当初は彼の年老いたお母さんが同居していたが、
途中からは1人暮らしで、特にここ数年は彼が1人で良く救急車を呼んで
いたりもしていたので、同情や心配もあったし、いつかは私も自分が
1人になるというのもあったので「1人で心細くはないのかな」と思った
りもしていた。
以前は土建業の日雇いの仕事をしていたり、そういう仕事を通しての
仲間なのか家に人が訪ねて来ている様子もたまには見かけた。
自転車で颯爽と家を出て行く姿やどこかから帰ってくる姿も良く見かけて
いた。10年くらい前だろうか、会った時に「ピロリ菌の除去をした」と
いう話をしていて、それを私が旦那に言うと旦那は「一番菌がいなさそう
なのにね」みたいなことを言っていて、それは要はそれくらい健康的と
いうか、現代人のようにいろいろ電子機器に蝕まれているような生活と
は一番遠いところにいるという私達のイメージから来ている言葉で、
それまでは私も彼に対してはすごく健康で元気、タフそうというイメージ
があったものだった。しかしそのピロリ菌の話を聞いたあとからは、度々
救急車を呼ぶようになったり、見かけても「大分老けたな」という印象を
持つことが多くなっていた。
最後に言葉を交わしたのは去年の12月くらいだったと思う。
私がいつものように落ち葉の掃除をしていた時に、彼も道路の掃除をして
いたので、私の姿を見てまた話しかけてきた。「いつもすみませんね」と、
毎年変わらないいつもの会話。そしてその少し前に彼がまた救急車を呼んで
いたので「この間救急車来てでしょう?あれね、結石。」と彼が確か尿管
結石だったと思うが発作の痛みで救急車を呼んだという話をしていた。
「うちの主人の兄も尿管結石やっていますよ」という話を私もした。「水分
たくさん取った方がいいって言うけど、そんなに飲めないじゃん?」みたい
なことも言っていたかな。
あと、去年の夏に、彼の家とは反対側の2軒隣りのやはり独り暮らしの
おじさんが亡くなったのだけど、その人のことを彼が聞いてきたので、私が
「亡くなっちゃったんです」と言うと「あの人亡くなっちゃったの!?」
とすごく驚いていた。それから数ヶ月しか経っていないのに、まさか本人
だって今同じように言われる立場になっているとは思わなかっただろう
なと。
私はその時初めて彼に言った。ちょっと迷ったが言った。
「何か大変なことがあったら声かけてくださいね」ということだった。
しかし彼と会話を交わして、家の中に入ったあとに私は、本当に彼の力に
なりたいと思って言ったか?どこかいい人と思われたくて言っていない
か?そう私が言った時彼は「いやぁー、何かあったらすぐに救急車呼ん
じゃうから(大丈夫)」と少し冗談っぽく言ってはいたが、本当に彼が
「じゃあ、具合が悪くなったら病院連れて行ってくれる?」と言ったら
お前は心からそうしてあげたいと思えるのか?なんてことを自問してしま
い、そんなことを言ってしまったけど、そう言って気持ち良くなっている
のは自分だけで、本当はできそうにないことをそんなふうに安易に口に
することは返って不誠実なのではないか、なんてことを悶々と考えてしま
ったのだった。
でも今こうなってしまって、今思えば。
もし、彼が実際にはウチに頼ること、頼りたいという気持ちはなくても、
そう私に言われて悪い気はしなかったのだとしたら、もしかしてちょっと
嬉しかったという気持ちがあったのだとしたら、その時はまさかそれが最後
になるとは思ってなかったけど、お別れの言葉くらいにはなったのではない
かとも思った。実際には特に彼は私のそんな言葉など気にもかけていなか
ったかもしれないし、言われて「何言ってんだ」というふうに思ったかも
しれないし、それは彼にしかわからないけど、記憶がそんなに遠くないうち
にそこそこに会話ができたことは良かったなと思った。
結婚もしておらず、定職にもついていなかったので、たぶんだけどまっと
うな世間に対する劣等感のようなものを持っていたんじゃないかな、だか
ら逆に発言や態度も、負けるもんか!じゃないけどいつも強気だったんじゃ
ないかな、そうやって世間と闘ってきた部分はあるんじゃないかなと私は
彼が生きていた時にも何となく感じていた。
私もそうだから。
だからお疲れ様とは言いたい。
そして私達が新しい土地で生活を始めるに当たって、最初に接してきて
くれた人だったし、ウチの旦那にも一度海釣りに一緒に行かないかと言って
きたこともあり、でも旦那は「船酔いするんで」と断ったらしいし、もし
船酔いしなくても社交的ではない旦那は断ったかもしれないが、ウチの旦那
と仲良くしたいという気持ちが一時でもあったのだとしたら、ありがとうご
ざいますと。

あと、やはりこうやって1人で亡くなるってことが私にも旦那にも他人事
ではなく、自分たちにも充分にありえることだということを改めて
見せられた気にはなって、暗い気持ちになってる。
死んだあとはもう関係ないやって思いもあったけど、こういうのを見せられ
ると、やはり他人に迷惑かけるのは忍びないなともちょっと思った。
生存確認のシステムというか、動きがなくなったらどこかに連絡が行く
とかそういうのがあると聞いたことがあるので、今はまだ1人じゃないし、
まだ50代だから早いと思うけど、もう少し年を取ったらそういうことも
考えていかなきゃなと思った。


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