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C型肝炎ウイルス:肝細胞の脂肪使い増殖、解明=京都大学

2007年08月27日 | 創薬
 C型肝炎ウイルス(HCV)が細胞内で増えていく仕組みを、下遠野邦忠・京都大名誉教授(現慶応大教授)らのチームが初めて解明した。HCVが持つたんぱく質が、細胞内にある脂肪の塊「脂肪滴」を利用して新たなウイルスを作っていることが分かった。肝臓に脂肪が増えるとHCVも増えるため、下遠野名誉教授は「余分な脂肪滴の蓄積を防ぐ薬剤ができれば、HCVが原因の肝疾患の進行を抑制することが期待できる」と話している。

 HCVに感染すると、高い確率で慢性肝炎や肝硬変などになる。肝臓がんで死亡した人の約8割が感染しているといい、感染すると肝臓に脂肪がたまりやすくなる傾向があることも分かっていた。チームは、培養した肝細胞にHCVを感染させ、ウイルス形成の仕組みを調べた。

 HCVは、自らが持つ10種類のウイルスたんぱく質のうち「コア」と呼ばれるたんぱく質が、水と結合しにくい性質を利用して脂肪滴に近づき、脂肪滴の膜に張り付く。他のウイルスたんぱく質はそこに引き寄せられ、脂肪滴の周辺で新たなウイルスを作っていた。ウイルス形成の足場として、脂肪滴が使われているとみられる。

 成果は肝臓脂肪症の仕組みの解明や、コアが脂肪滴に近付くのを防ぐ薬剤の開発など、HCVの新治療につながるという。研究結果は26日(ロンドン時間)、科学誌「ネイチャー・セル・バイオロジー」電子版に掲載された。【中野彩子】

[毎日新聞 / 2007年08月27日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20070827k0000m040139000c.html


【C型肝炎ウイルス、細胞油滴表面で増殖 京大研が解明】(朝日新聞)

 国内で約200万人が感染しているといわれ、肝臓がんの大きな原因になっているC型肝炎ウイルスが、肝臓の細胞中にたまった油滴(脂肪滴)の表面で増殖していることを、京都大ウイルス研究所の研究グループが解明した。C型肝炎ウイルスが肝細胞に感染すると脂肪肝になりやすく、増えた油滴表面でウイルスが増殖する悪循環が起こるとみている。英科学誌「ネイチャー・セル・バイオロジー」の26日付電子版に発表した。

 研究は、今春まで京都大ウイルス研に在籍していた国立遺伝学研究所の宮成悠介・博士研究員と、下遠野(しもとおの)邦忠・慶応大教授(京大名誉教授)らが中心となった。

 研究グループは、肝がん由来の培養細胞にウイルスを感染させ、ウイルスが細胞のどこで増殖するのかを調べた。その結果、油滴の表面には、ウイルスの核をつくり、発がんに関係するとみられるコアたんぱく質や、ウイルスの遺伝子であるリボ核酸(RNA)、その他の関連たんぱく質があることがわかった。

 藤田保健衛生大の臼田信光教授と協力して電子顕微鏡で観察したところ、油滴の表面で感染力のあるウイルスがどんどんつくられていることが確認できた。コアたんぱく質には、ウイルスをつくるだけでなく、細胞内の脂肪を増やす働きがあることもわかった。

 下遠野教授は「油滴の表面にコアたんぱく質がくっつかないようにしたり、細胞内に脂肪が蓄積するのを阻害したりする新しい薬の開発につながる可能性がある」と話している

[朝日新聞2007年08月27日]
http://www.asahi.com/health/news/OSK200708270024.html

C型肝炎ウイルスは中性脂肪で増殖、京大グループが解明(読売新聞) - goo ニュース