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「シャトーブリアンからの手紙」(2012年フランス・ドイツ合作)

2014年12月01日 | 映画の感想・批評
 1941年10月20日、ドイツ占領下のフランスのナントでドイツ人将校が共産党員に暗殺されるという事件が起きた。パリのドイツ軍司令部に事件の報告が入り、ドイツ軍の将校でありながら反ナチであるシュテルプナーゲル将軍、シュパイデル大佐、ユンガー大尉は、ベルリンからの報復命令を心配する。そこへ駐仏ドイツ大使から「総統は150人の命を要求している」という冷酷な命令が伝えられる。
 シャトーブリアン郡にあるショワゼル収容所にはドイツ占領に反対する行動をとった者や共産主義者などの政治犯が多く収容されていたため、彼らの中から銃殺者のリストが作られることになる。リストには、占領批判のビラを映画館で配り逮捕された17歳のギィ・モケが入っていた。ギィは戦後、ナチ抵抗の悲劇の象徴として、パリの地下鉄の駅の名前にもなった伝説の少年である。
 シュレンドルフ監督は、ドイツ占領下のフランス市民銃殺を報告したエルンスト・ユンガー(大尉)の記録「人質の問題について」、人質になった人々の手紙、警察記録、作家ハインリヒ・ベルの小説などを基に脚本を書き上げた。
 「報復のための銃殺」を回避したい軍司令部のドイツ人将校、シャトーブリアン郡庁の役人、銃殺を命じられたドイツ兵、それぞれ苦悩しながらも誰もヒトラーの命令に背くことはできなかった。ギィたちのために収容所に駆けつけた司祭の「命令の奴隷になるな」という言葉が胸に突き刺さる。監督の妻であるマルガレーテ・フォン・トロッタ監督は「ハンナ・アーレント」で、「思考停止に陥るな」と訴えた。二人からのメッセージを心に刻まなければいけない。
 監督は、ドイツの過去の罪といえる史実を描くことで、「歴史を記憶することこそ、過去を乗り越え和解へと向かう道筋だ。ドイツ・フランス両国の和解なくしてヨーロッパはない」という思いを結実させた。
 「日本・中国両国の和解なくしてアジアはない」ですね!!(久)

原題:LA MER A L’AUBE
監督:フォルカー・シュレンドルフ
脚本:フォルカー・シュレンドルフ
撮影:リュボミール・バクシェフ
出演:レオ=ポール・サルマン、マルク・バルベ、ウルリッヒ・マテス、ヤコブ・マッチェンツ、ジャン=ピエール・ダルッサン


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