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「GONIN サーガ」(2015年日本映画)

2015年10月11日 | 映画の感想・批評
 1995年に製作されたバイオレンス映画の名作「GONIN」の後日譚である。何しろ20年もの歳月が経っているので、前作の断片はところどころ頭に浮かんでも全体といえば記憶のかなたにある。だから、本作は冒頭でおさらいのように前作のシーンを部分的に引用することで「事件」の概要について説明する。そうして、「事件」の被害者である暴力団の幹部たち――大越組の組長と若頭の久松の遺族・・・かれらのその後が描かれる。
 前作は、借金地獄で追い詰められたディスコ経営者(佐藤浩市)が仲間を募って貸し手の暴力団から巨額の金を強奪する作戦に成功し、やがてその暴力団が殺し屋(ビートたけし)を雇い、かれらを追い込んでゆくという話だ。むしろ大筋より、首謀者のディスコ経営者と男娼あがりの美青年(本木雅弘)のただならぬ関係とか、それに対比するように殺し屋とその手下の青年(木村一八)の加虐的な性愛が描かれるなど、不思議な情感を漂わせていた。そうしたアブノーマルな人間関係が本作では希薄となり、ずいぶん直球勝負となったところは少し物足りない。
 さて、大越組の上部団体、五誠会の跡目は二代目(テリー伊藤)が継ぎ、倅の三代目(安藤政信)はフロント企業の芸能プロ社長として幅を利かせている。大越の遺児(桐谷健太)はかれらのボディガードとして使い走り同然にこき使われているし、久松の遺児(東出昌大)はスナックを経営する母親とひっそり暮らしている。大越組を再興しようと誓う遺児ふたりと、三代目に翻弄される歌手(土屋アンナ)、20年前の「事件」の真相を究明しようと動いている謎の若者(柄本佑)の4人で五誠会の巨額の資金を強奪するのだ。因果はめぐるというやつで、五誠会は再び殺し屋(竹中直人)を雇い4人を追うが、この殺し屋が唯一アブノーマルな存在だといえる。 
 特筆に価するのは石井監督のたっての願いで特別に出演したという根津甚八の変わり果てた姿だろう。ほとんど演技とは言いがたいリアルな迫力とでも言えばよいのだろうか。
 それと、一瞬場面を暗くして同じ構図で再開することで時間経過をとばすという編集の場面転換手法が奇妙な味を醸し出していた。(健)

監督・脚本:石井隆
撮影:佐々木原保志、山本圭昭
出演:東出昌大、桐谷健太、土屋アンナ、柄本佑、竹中直人、安藤政信、テリー伊藤、根津甚八


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