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「ラストマイル」(2024年、日本映画)

2024年09月11日 | 映画の感想・批評
大手外資系のショッピングサイトの大型バーゲン「ブラックフライデー」を控え、ますます忙しくなろうというとき、各地で配達された荷物を開けたとたんに爆発。その後、テロかと思わせるような警告メールも入り、配送工場は出荷を止めるべきかを迫られる。
また事故を本社にいかに伝えるか。株価が暴落するから、今はダメ?世界時計との闘い。
何が一番大切なの?すべてはお客のためなのでは?
ただ、医療のためだけは止められない。薬がなければ治療も不可能。メディカル系の荷物だけは優先的に配送しようと、必死で探す主人公。
爆発物の特定や爆発の原理などがよくわからず、ほわあんと観てしまったが、ヒロインが荷物を開けようとする瞬間は本当に手に汗を握る思いだった。

火野正平、宇野祥平が演じる親子の末端の配送請負業者。1個を配り終えて得られるのがたった150円。再配達しても同じ。爆弾騒動で受け取りを拒否されたら、その負担は末端の業者なのだろう。事件の解決後、20円ほどは単価が上がったらしいけど。
簡単にクリックして、荷物が玄関先まで届けられる便利さ。慎重になろうよ。必要なものは出向いて買いに行こうよ。足があるのなら。と、かねてから思ってきた。
じぶん自身が小売業をしているので、お店できちんと説明をして、納得して選んでもらいたい。それだけの自負を持って営業しているつもりなのだけど。通販サイトのほうが店頭売りより安くなっているのを見て恨めしくなっている。送料はここに来る交通費と思ってほしい。発送のためには梱包だっているのよ。
もちろん、私も荷物を受け取る側でもある。商品の梱包ぶりにはいつも感心してる。再配達してもらうことのないように、気を付けよう。笑顔で荷物を受け取ろう。配送業の方にもっと敬意をもとう。きちんと仕事に見合うものが払われてほしい。

「ラストマイル」という言葉は、お客の手元にまで届けられる、最後の距離という。つまりはショッピングサイトでも、中間の「羊運送」でもなく、親子の請負業者が担っている部分。父親は「受け取ったお客の笑顔を見たくて」それが彼の仕事への喜びであり、誇り。今や昼食時間が10分しかなくても。そんな心意気に凭れ掛かっている配送業の現実。おそらく事故の補償などありようがない。
送り出すショッピングサイトは末端の事情などお構いない。
「すべてはお客のため」いくつかある会社のスローガン、すべてはこの言葉にすり替えられていく。マネージャーの岡田の言葉をことごとく、「お客の為に」にすり替えていくセンター長の満島。そのやり取りが不気味だった。
冒頭にも描かれたロッカーの扉に書かれた数式。身をもってベルトコンベアを止めようとしたのか。しかし、止まることなく。いや一度は停止したはずが。
高校時代(ほぼ50年前!)の国語の教科書に載っていた「セメント樽の中の手紙」を思い出した。何も変わってない。

大好きなテレビドラマ「アンナチュラル」と「MIU404」の世界観を踏襲する、「ユニバーサルシェアード」というらしい。プロデューサーの新井順子、監督の塚原あゆ子、脚本の野木亜紀子のトリオによる完全オリジナル作品。
ドラマの出演者が「その後」も生きている、同じ職場で仕事を続けている、あるいはドラマの中で救われた少年たちが成人して、物語の後日談に加わっている。それもこの映画の楽しみであった。「ああ、無事だったのね。成長してる!」と。ドラマの世界を一緒に生きているような錯覚をもたらせてくれるのも見どころの一つ。

パンフレット、ちょうど入荷しました!というので買ってきた。一部、袋とじになっている。まだ開いてない。うん、ドカンとならないことは信じてるし。
コロナ禍の配送業者を取り上げたNHKドラマ「あなたのブツがここに!」も良かったのよね。あ、ネタバレになっちゃう?
誰かと語り合いたくなる映画です。なのに、「まだ言わんといて!」とあちこちからブレーキをかけられ、ちと辛い。もう一度観に行って、問題点を整理したい。ああ、制作会社の思うつぼだわ。見事にはめられています。(アロママ)

監督;塚原あゆ子
脚本:野木亜紀子
撮影:関毅
出演:満島ひかり、岡田将生、ディーン・フジオカ、火野正平、阿部サダヲ



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