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「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」(2024年 アメリカ映画)

2024年08月07日 | 映画の感想・批評


 今日(8月7日)は立秋。猛暑はまだまだ続きそうだが、暦の上ではもう秋だ。秋といえば、月がひときわ美しく輝くとき。かの紫式部も石山寺で美しい月を見ながら、源氏物語の構想を練ったというから、その神秘的で幻想的な魅力は、数千年も前から人類の心の中に息づいている。そして科学の進歩と共に「月へ行ってみたい」という願望が表れてくるのも、当然のことだろう。
 今年は人類が初めて月面に降り立ってから55周年に当たるという。55年前といえば、自分が中学3年生だったとき。高度経済成長が続いた60年代を経て、21世紀にもなれば月旅行も夢ではないと思っていたあの時に、この作品に描かれているような極秘プロジェクトが行われていたとは・・・?!
 「1960年代の終わりまでに有人月面着陸を成功させる。」と宣言したのはケネディ大統領。1957年にソ連(現ロシア)が世界初の人工衛星スプートニクを打ち上げて以来、米ソ両国の宇宙開発競争が激化。科学技術のあらゆる分野で世界一を自負していたアメリカにとって、“先を越された“ことはよほどショックだったようで、翌1958年にはNASA(アメリカ航空宇宙局)を設立。有人宇宙飛行計画(アポロ計画)をスタートさせたのだが、有人宇宙飛行を実現させたのはまたもやソ連が先だった。1961年4月にボストーク1号で地球周回軌道を一周し、「地球は青かった」という名言を発したのはソ連のガガーリン少佐。かくしてこのまま宇宙開発の覇権争いで後れをとっていては国民も納得しないだろうと、あの大宣言となったのだ。
 資料を基にした前置きが長くなったが、その1960年代の最後の年がこの映画の舞台。人類の大きな夢は未だ成功ならず。国民の月への関心を呼び戻すために、ニクソン大統領に仕える政府関係者が動き出す。とにかく60年代にNASAが月面着陸を実現したことを国民に知らせる必要があるのだ。さあ、どうする?!PRマーケティングのプロを使ってのこの作戦、果たしてどんな結果が待っているのか??
 巧みな話術と行動力、そしてマーケティングの上手さで人々を惹き付けるPRのプロ、ケリーを演じるのはスカーレット・ヨハンソン。マーベルの「アベンジャーズ」シリーズでブラック・ウィドウを演じ、アクション女優としてのイメージが強いが、本作ではプロデューサーとしても名を連ね、堂々たる主演ぶり。ケリーとぶつかり合う実直なNASAの発射責任者コール役にはチャニング・テイタム。「G.I.ジョー」や「フォックスキャッチャー」等、立派な体格を売り物にした作品が思い出されるが、肉体派ともいえるこの2人、「反目しながら恋に落ちる」という60年代のロマ・コメ作品にはピッタリの相性なのだ。この作品は、衣装にしろ、音楽にしろ、60年代のティストがいっぱい詰め込まれていて、作品の編集方法もまるであの頃の映画を観ているかのよう。極めつけはNASAの協力によって実現したアポロ計画時代の未公開映像をいろいろ観ることができること。あれは一体フェイクなのか、本物なのか?!
 アポロ11号が月面に一番乗りを果たした後、アメリカ国民の月への関心は薄れ、アポロ計画は3年後の17号で終了。それ以降人類は月を訪れていない。しかし今、NASAが主導し、日本も参加している国際宇宙探査プロジェクト「アルテミス計画」では、2026年以降に米国人女性が月面を歩く予定だそうで、日本人宇宙飛行士2人ももうすぐ月に着陸するとのこと。そして何と月にも水がたくさんあるそうで、2040年頃にはその水を生かして、月での生活も可能になるとか。えっ、16年後ならまだ生存しているかも!!リニア開通とどちらが先になるのかな?!
(HIRO)
 
原題:FLY ME TO THE MOON
監督:グレッグ・バーランティ
脚本:ローズ・ギルロイ
撮影:ダリウス・ウォルスキー
出演:スカーレット・ヨハンソン、チャニング・テイタム、ウディ・ハレルソン、ジム・ラッシュ、


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