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「クワイエット・プレイス」(2018年 アメリカ映画)

2018年10月17日 | 映画の感想・批評
 

季節はずれの暑さが続いたこの時期にふさわしいホラー映画の逸品である。
 とにかく恐い。むかし「エイリアン」や「プレデター」を見たときの尋常ではない恐怖が甦る。だから、この手の映画が苦手な人はやめたほうがよい。
 第一、冒頭から衝撃的だ。この映画の見どころなので、これ以上書けないのが歯がゆいけれど、得体の知れない捕食者がちらっと登場して、まさかの展開となる。
 設定はこうである。詳しい説明がないので想像するしかないが、恐らく地球外生命体と思われる謎の生き物が数匹、平穏な農村地帯に侵入したのだろうか、近隣の人々はほとんど捕食されて、両親と耳の不自由な女の子、その下の長男、末弟という5人家族が身を寄せ合って暮らしている。捕食者(エイリアン)は聴覚が敏感で物音に反応して獲物を狩る。ただ視覚は疎いようだ。それで、物音を立てられない。冒頭、末弟の幼い男の子は父親から取り上げられたにもかかわらず、ロケットの玩具に電池を戻してスイッチを入れてしまったことで捕食者をおびき寄せてしまう。父親は必死の形相で息子を救い出そうとする。
 さらに、母親は身ごもっていて予定日も近い。これが恐怖を倍加する。生まれた赤ん坊はオギャーと泣くのだ。どう対処するのだろうと、われわれ観客は暗澹たる気持ちになる。というのも、この作者は、恐がらせるためなら手段や表現を選ばぬ「あくどさ」だから、赤ん坊だって殺しかねないのである。
 音を立てられないという設定なので、台詞が極度に少ない。映画本来の映像に多くを依存した手法が奏功した好例である。
 何しろ、人は気をつけていても生活する上でうっかり大きな音を立ててしまう。エイリアンは音を聞きつけると、その図体から及びもつかない俊敏さで襲ってくる。追い詰められた家族は知恵を絞って逃げ回るのである。ただ、エイリアンにも弱点がある。ヒントは聴覚に関わることで、なかなか説得力がある。
 初めからショッキングな場面を畳みかけるように見せ、目前で肉親を殺されるという残酷描写を重ねながら、いかなるピンチにも叡智を駆使し勇気を奮い起こして敢然と立ち向かえば必ず道は開けるという、威風堂々のすがすがしいラスト・カットに元気をもらい、私は思わずニンマリしてしまった。(健)

原題:A Quiet Place
監督:ジョン・クラシンスキー
原案:スコット・ベック、ブライアン・ウッズ
脚本:スコット・ベック、ブライアン・ウッズ、ジョン・クラシンスキー
撮影:シャルロッテ・ブルース・クリステンセン
出演:エミリー・ブラント、ジョン・クラシンスキー、ミリセント・シモンズ、ノア・ジュープ


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