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「鬼滅の刃 無限列車編」 (2020年 日本映画)

2020年12月16日 | 映画の感想・批評


 2020年ももうすぐ終わりを迎えようとしているが、今年の映画界の最大の話題といえば、子どもから大人まで鬼滅、キメツ、きめつのやいば!!もはや社会現象だと言ってよく、手元の最新資料によれば、公開からおよそ2ヶ月で観客動員2254万人、興行収入は300億円を超え、19年間破られることのなかった「千と千尋の神隠し」の記録(本年度のリバイバル上映で少し増えて316.8億円)を年末までに抜き去りそうな勢いだ。新記録樹立は間違いないことだろう。
 その人気のワケは?!まずは原作本。書籍離れが進む中とはいえ、週刊少年ジャンプは今も健在。原作は2016年2月から20年5月まで連載され、この12月4日にコミックスの最終23巻が発売されたばかりだが、買い求めるファンたちが長い列をなして並んだのは久しぶりの光景。映画もほぼ同じ時期に公開とあって、その人気に拍車がかかった。また、テレビアニメとして26話が製作されており、映画公開前にその一部が放送され主題歌「紅蓮華」も話題に。爆発的大ヒットの下地は十分できあがっていたようだ。さらにコロナ禍であったことがこの作品には吉と出た。第1波の時期にはやむなく休館していた映画館も徐々に再開し、全席入場することも可能となったのがこの秋。ちょうどハリウッドの大作が制作延期続出で上映作品が少なく、対抗馬なしの状況でシネコンのスクリーンを独占。何と1日に20回以上も上映し、副題の“無限列車編”にあやかって上映スケジュールを時刻表のように作った所も現れ、まるで「新快速上映」だと注目された。
 舞台は大正時代。主人公の竃門炭治郎は山奥で炭焼き職人として働いていたが、町に炭を売りに出かけている間に家族を鬼に惨殺され、唯一生き残ったが血を浴び鬼化した妹を救うために≪鬼殺隊≫に入って修行したという設定が、ロマンと新しさを兼ね備え、老若男女あらゆる層を引き込む要因ともなっているようだ。宮崎駿監督作品のような今までの日本アニメのヒット作品とは全く趣が違っていて、しばしば不思議な感覚に襲われる。鬼を滅ぼすための刃が大活躍するため、血が飛んだり、首がはねられたりといった残酷なシーンが強烈なインパクトを残すのだが、繊細な自然描写とともに非常に美しい動きで表現されていて、見ていてその場にいるような思いに追い込まれ、全集中!!さらに炭治郎をはじめそれぞれのキャラクターの言葉がハンパなく心に突き刺さり、コロナ禍の沈鬱とした気分を前向きにさせてくれるのもいい。極めつけは怒号と共に流れる主人公たちの大粒の涙と母の愛。やはりこれにはかなわない。GIVE UPだ!!
 “無限列車編”は原作コミックスの7、8巻の内容。映画化第2弾は2022年以降に公開とのニュースも出た。海外でも注目され、「TENET テネット」を抜いて本年度世界興収第2位に浮上したとか。このブーム、まだまだ続きそうだ。
 (HIRO) 

監督:外崎春雄
脚本製作:ufotable
原作:吾峠呼世晴
撮影:寺尾優一
声の出演:花江夏樹、鬼頭明里、下野紘、松岡禎丞、日野聡