シネマ見どころ

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「6才のボクが大人になるまで。」 (2014年 アメリカ映画)

2015年04月12日 | 映画の感想・批評
 

 緑の芝生に寝転がりながらどこまでも広がる空を見上げている6才のボク。大きくなったらどんな大人になっているのかな・・・。アカデミー賞を逃したとはいえ、昨年末公開されるや、かつて見たことのない傑作と、息の長い興行を展開中。上映館は今も客足が絶えない。
 「長い」というのはこの作品の最大のポイント。上映時間も長いが、何と12年もかけて1つの作品を完成させたところがすごい。その間、相次ぐ引越しに両親の離婚、再婚と、大人の都合に巻き込まれながらもボクは大きくなっていく。しなやかに、そしてたくましく。
 「ビフォアシリーズ」3部作では、恋人たちの変わりゆく姿を描き話題をさらったが、同時期にさらに長い時間をかけてもう一つの作品を作っていたなんて、リチャード・リンクレイター監督って本当に型破り。また、完成を信じて参加したスタッフ、キャストたちの決意も相当なものだ。それだけ信頼できる監督だということか。
 主人公のメイソンに、エラー・コルトレーン。あどけない少年が、数々の試練を乗り越えて思春期を通り過ぎ、一人前の青年となって親の元を巣立っていく。ああ、アメリカも、テキサスも、日本と同じなんだなあと自らの体験を確かめるように振り返る。成長しているのは子どもたちだけではない。シングルマザーになった母親は何と大学に入って勉強をし直し、修士課程を卒業。そのまま大学の講師になる。母子と離れ、アラスカで自由な暮らしをしていた父親も、再婚した後は保険外交員に。新しく子どももできた。大人だって成長しているのだ。イーサン・ホークとパトリシア・アークエットという一流スターが、こんなにも長期にわたり出演し続けたのも、この作品とかかわる楽しさを体感していたからに違いない。姉のサマンサを演じているのは監督の娘、ローレライ。自分の娘の12年間も1本の映画の中に生き生きと収めてしまうなんて・・・。
 大学入学の日に友人たちと山に向かうメイソン。あの6才の時のように、夕日を見つめながらつぶやく。「一瞬とは・・・」。目指すはプロのカメラマン、一瞬をとらえるアーティスト、人生は一瞬の積み重ねだ。大人の入り口に立ったメイソンの瞳に映った未来とは・・・。
 (HIRO)

原題:Boyhood(少年期)
監督・脚本:リチャード・リンクレイター
撮影:リー・ダニエル、シェーン・ケリー
出演:エラー・コルトレーン、イーサン・ホーク、パトリシア・アークエット、ローレライ・リンクレイター