シネマ見どころ

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「イミテーション・ゲーム」(2014年アメリカ・イギリス映画)

2015年04月01日 | 映画の感想・批評


 アカデミー賞の作品賞にノミネートされた力作だ。ある日、数学者アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)の家に賊が入り、犯人を捕らえた警察が数学者を訪れると、本人は盗まれたものなどないから帰ってくれと取りつく島もない。何か変だと睨んだ刑事は、数学者がスパイ活動をしているのではないかと疑う。
 話はずっと遡って、第二次世界大戦下の英国。破竹の勢いのナチス・ドイツはヨーロッパ大陸を席巻し、英国に侵攻しようとしていた。そこで、英国はドイツの暗号を何とか解読して攻撃に備えようと、優秀な人材を募る。ドイツのローター式暗号機「エニグマ」は深夜に暗号のコードを更新する。したがって、朝に傍受した暗号を1日かけて解読したとしても深夜の0時過ぎにはリセットされ、翌朝の解読には役に立たないというわけだ。
 暗号解読チームの中に、自分を天才と疑わぬ若き日のアランがいた。不遜で協調性に欠けるアランは同僚や上司と何度もトラブルを起こし確執を深めるのだが、やがて仲間とも打ち解けるようになり、ようやく共同作業が実を結んで暗号解読に成功する。こうして英国はドイツの毒牙から逃れるのである。
 そうして戦後、話は冒頭の事件に戻り、刑事は調査を進めるうちにアランのぎこちない態度の理由はスパイ活動ではなく私的な秘密にあると気づく。とうとう知られざる性癖を告白したアランは起訴され、収監か薬物療法のどちらを選択するかを迫られて後者をとるのだ。実話をもとにしたこの物語はここで終わるけれど、1954年にアランは41歳の若さで自ら命を絶ったという。その後「ウォルフェンデン報告」を受けて英国が同性愛を合法化したのは1967年のことであると字幕に出る。
 わが国ではようやく渋谷区で同性同士のパートナーシップ証明書を発行する条例が成立したそうだ。いわれなき差別どころか罪人として扱われた多くの人びとに神の祝福あれ!(健)

原題:The Imitation Game
監督:モルテン・ティルドゥム
原作:アンドリュー・ホッジェズ
脚色:グレアム・ムーア
撮影:オスカル・ファウラ
出演::ベネディクト・カンバーバッチ、キーラ・ナイトレイ、マシュー・グード、ロリー・キニア