西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

靭猿-2

2012-03-18 | 泣けます、長唄
靭猿-2


猿曳きは、猿回しで得たわずかな銭で、ひと日ひと日の命をつないでいるのだ。
まして生きている猿の皮が、どうしてあげられようか。
猿曳きはひたすら詫びる。

「これをあげましては明日より何の手業(仕事)なし。こればかりはお許しを」

だが、大名は威丈高に家来に言う。
「一矢に射てしまえ!」

今にも弓を引かんとする勢いに猿曳きは、

「ああ、申し待って 下さりませ」

かくなる上は、せめて小猿が苦しまないようにしてやりたい。

「猿の皮が御用ならば そのように 射殺されましては
皮に疵がつき… ここに猿の一撃ちと申しまして 一撃ちにて
命の失せる ところがござるによって 殺して進ぜましょう…」


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tea break
photo by 和尚