ノアの小窓から

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ダビデとバテシェバ③ 神に背く者

2020年07月02日 | 聖書

 


 「ウリヤを激戦の真っ正面に出し、彼を残してあなたがたは退き、彼が打たれて死ぬようにせよ。」
 ダビデ王からこのような手紙を受け取ったダビデ軍の将軍ヨアブ(最高司令官、ダビデの甥)は、ただちに王の命令を実行に移しました。

 

 ヨアブは町を見張っていたので、その町の力ある者がいると知っていた場所に、ウリヤを配置した。(第Ⅱサムエル記11章16節)
 その町の者が出て来てヨアブと戦ったとき、民のうちダビデの家来たちが倒れ、ヘテ人ウリヤも戦士した。(17節)
 そこでヨアブは、使いを送って戦いの一部始終をダビデに報告する時、(18節)
 使者に命じて言った。「戦いの一部始終を王に報告し終わったとき、(19節)
 もし王が怒りを発して、おまえに『なぜ、あなたがたはそんなに町に近づいて戦ったのか。城壁の上から彼らが射かけて来るのを知らなかったのか。(20節)
 エルベシェテの子アビメレクを打ち殺したのはだれであったか。一人の女が城壁の上からひき臼の上石を投げつけて、テベツで彼を殺したのではなかったか。なぜ、そんなに城壁に近づいたのか』と言われたら、『あなたの家来ヘテ人ウリヤも死にました』と言いなさい。(21節)
 こうして使者は出かけ、ダビデのところに来て、ヨアブの伝言をすべて伝えた。(22節)

 

 聖書は寡黙な書物だと、ある牧師が書いていました。そうだと思います。たとえば、このヨアブはダビデの忠実な家来ですが、聖書の行間を読むと、なかなかの策士です。
 彼は、サウル家の将軍アブネルを暗殺しています。アブネルはサウル王やヨナタン(サウルの王子)亡き後のサウル陣営の柱でした。サウル家は、王が死んでもまだ、北イスラエル十部族を従えていました。

 アブネルは、サウルの遺児イシュ・ボシェテを立てて何とか、サウル王朝を維持していたのですか、愚かなイシュ・ボシェテに見切りをつけたため、ダビデ王朝の傘下に入り全イスラエルを統一王国とするという案をもってダビデを訪れたのです。和睦は成立するのですが、その帰途、ヨアブに呼び戻され、抱擁の一瞬のすきを突かれて、殺されるのです。(Ⅱサムエル記3章)


 この時、その理由をヨアブは、弟アサエルのかたき討ちだとしています。しかし、ヨアブとアブネルはもともと対立していました。

 アブネルがダビデ陣営に来て用いられたら、ヨアブのライバルになったことは確実でした。

 アブネルが葬られたことで、サウル王朝は事実上崩壊するのですが、ヨアブはその将来を安泰にしたのです。

 

★★

 

 ヨアブは、ダビデの手紙の意図を呑み込んだでしょう。そして、平時なら兵士を配置しない敵の最も強い場所に、ウリヤとダビデの家来を行かせるのです。城壁のそばは、射かけられた矢が届く危険な場所です。さらに近づけば、城壁の上から物を投げ落とされる恐れもあります。
 例話として出されているアビメレクの話は、士師記にあります。(士師記9章53節) 有名な大士師ギデオンにまつわる逸話の最後の部分です。アビメレクはギデオンの七十人の息子のひとりでしたが、ほかの兄弟全部を殺害し(末子のヨタムがただ一人逃げ延びています。)、ギデオンの跡を継ごうとしました。しかし、神の選びも人望もないアビメレクは、たちまち同胞を敵に回し、悲惨な最期を遂げるのです。

 

 ヨアブがわざわざイスラエルの歴史から前例を出しているのは、自分の任務に対する忠実さ、周到さを伝えているのでしょう。ウリヤは忠実な戦士ですから、上官の命令なら、たとえ死ぬとわかっても止まって戦ったのです。

 

 ダビデは使者に言った。「あなたはヨアブにこう言わなければならない。『このことで心配するな。剣はこちらの者も、あちらの者も滅ぼすものだ。あなたは町をいっそう激しく攻撃して、それを全滅せよ。』あなたは、彼を力づけなさい。」(25節)
 ウリヤの妻は、夫ウリヤが死んだことを聞いて、夫のためにいたみ悲しんだ。(26節)
 喪が明けると、ダビデは人をやり、彼女を自分の家に迎え入れた。彼女は彼の妻となり、男の子を産んだ。 しかし、ダビデの行ったことは主のみこころをそこなった。(27節)

 

 25節のダビデのことば、26節のバテシェバの様子。ともに、聖書記者の皮肉を読み取ることができます。「ダビデの行ったことは主のみこころをそこなった」とのことばで、読者はようやく納得できるでしょうか。
 それでも、私たちは思うのです。「なぜ? なぜ、あのダビデが!?」

 ダビデは、神から、その家の末に、救い主がお生まれになるという栄誉を与えられた王です。

 神から、「人はうわべを見るが、主はこころを見る」と言われて、イスラエルの王として抜擢されたのです。

 

 

 

 

Coffee Breakヨシュア記・士師記・ルツ記・サムエル記329 神に背くもの(第Ⅱサムエル記11章16節~27節、詩編14篇1節~3節) より再録しました。

 

 


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