ノアの小窓から

日々の思いを祈りとともに語りたい

どしゃぶり

2014年08月21日 | 自然



       子どものころを思い出すと、
       いまよりずっと自然が残っていたと知るのです。
       山や川や海のたたずまいだけではない。

       町の暮らしであっても、まさに自然を思い知ることが多かった。
       蚊の多さは今の比ではなかった。

       蚊に食われるというのは、文字通り食われるのだった。
       夜店を冷やかしていても、立ち止ると蚊に食われる。団扇で蚊を払いながら歩いたもの。

       家の軒先には、すぐに大きな蜘蛛が巣を張った。
       家の中も油断はできない。
       おやつの残り物を置いていると、どこからか大量のアリが這い上がってくる。

       食べ物を商う市場はハエが飛び回り、ハエ取り紙に真っ黒にハエがくっついていると、
       ちょっと爽快だったりしたもの。


       梅雨時や台風時のどしゃぶりは、ほんとうに迫力があった。
       我が家は、背後が六甲山の裾野にあたっていたので、それこそ、
       全山に降り注ぐ雨の音がぶあつい轟音となって響いていた。
 
       屋根から落ちる雨は、樋(とい)を溢れ、軒先をカーテンのようになってさえぎり、
       庭に穴をうがつ音もすさまじかった。


       ずいぶん前に、その近くの家が洪水で流されたと聞かされていたから、
       「どうか洪水になりませんように」と、息を詰めていた夜。


       いざというときは、どの戸口から逃げようと言い聞かされ、親子で一室に集まったりしていた。

       後から考えると、
       災害とは、そんな分別が役立たない一瞬の出来事だったと思う。


       災害のニュースを聞くたびに、
       自然が、牙を剥いていた幾夜を思い出すのです。
         
       
       
                            
       




      


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