ノアの小窓から

日々の思いを祈りとともに語りたい

パリの思い出2

2014年09月12日 | 思い出




      パリの思い出なのだから、
      シャンソンの歌詞に作れるか、
      エスプリの効いた短編小説のような物語だといいのですが、
      そのとき、ロマンチックなエピソードはなにもありませんでした。

      パリ二日目の夜はシャンゼリゼ散策に疲れて、
      いったんホテルに戻って、仕切り直しをすることにしました。

      地図を見る限り、ホテルから20分も歩けば、繁華街があるはず。
      10月のこととて、早くも暮れかけた街に出て。

      なんといっても、しっかりした食事で胃を満たしたかったのです。
      おしゃれなフランス料理でなくていいから、お惣菜風のホカホカした煮物なんかあるといいなあ・・と、
      きつねうどんやおでんのイメージにつのる思いなのです。


             ★★  ★★  ★★


      一本の下り坂が南に延びていて、その両側には点々と街灯が並んでいます。
      全体に、日本と比べると、おそろしく暗い町なのです。
      わずかの光に誘われて
      せっせと歩きます。ちらちらとネオンが洩れているあたりを目指し、
      きっとその先に、
      下町の定食屋さんみたいな店があって、
      ドライフラワーの薔薇みたいなすてきなおばさんが、
      後れ毛なんかかき上げながら、「ボンジュール」と迎え入れてくれる?


      それにしても、暗い。これが繁華街? いったいどこに定食屋さんがあるのやら。

                   ★★★★★


      街灯の陰に、女性がひとり。
      
      黒いコルセットに黒いタイツ、黒い靴、黒い髪と黒づくめなのに、
      白い首、肩、太ももが闇に浮かび上がり、
      突如、息が止りそうになりました。
      まずいところに、迷い込んでしまった!!
      難癖を点けられたら、どうしよう。

      もちろん、それは杞憂というもの。彼女にとって私はハエほども気を引かない?

      そもそも、このような界隈で、
      夜目には14歳にしか見えない東洋人の女子など、誰の気を引くわけもないとようやく冷静になり、

      目についた定食屋風の店に入り、
      恰好をつけてグラスワインを一杯注文したものの、
      フランス語は話せず読めず、料理がわからず、結局サンドイッチの夕食となりました。

      期待の白ワインには度肝を抜かれました。グラスがとても大きく、
      透明の液体がなみなみとふちきりぎりまで。

      気のせいか本場のワインは強く、一口でくらっと来て、結局飲むのを中止。

      早々と店を出て、今度は上り坂の暗い道を一心に北に向かって歩いたのでした。

      あー。お腹が空いた。のどが渇いた。
      あしたこそ、なべを・・と、思いながら。