猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

ハンガリー連続殺人鬼

2022-09-16 22:22:54 | 日記
2016年のハンガリー映画「ハンガリー連続殺人鬼」。

ハンガリーの田舎街マルトフで女性の他殺体が発見される。間もなく容疑者
として被害者と交際していたアーコシュ・レーティ(ガーボル・ヤースベレ
ーニ)という男が逮捕され、終身刑が言い渡される。ところが7年後、同じ街
で同様の手口の連続殺人が始まる。レーティの冤罪を確信したニョモーゾ・
ボータ刑事(ジョルト・アンゲル)とズルターン・シルマイ検事(ピーテル・
バールナイ)は真犯人を追うが、次々と遺体が発見され、街は恐怖に陥る。

ハンガリーに実在した連続殺人鬼ペーテル・コヴァーチをモデルにしたサス
ペンス・ミステリー。1957年、田舎街マルトフには大きな靴工場があり、
大勢の男女が働いていた。夜に仕事を終えて帰宅途中のある女性は、中年男
性アーコシュ・レーティに迎えられて一緒に帰ったが、途中で口論となる。
翌朝女性の遺体が発見された。遺体は頭部を殴られ屍姦されていた。目撃証
言からレーティが事情聴取を受け容疑を認めたために逮捕される。裁判でレ
ーティには死刑判決が下りるが、その後の裁判で初犯であることを考慮され
て終身刑に減刑される。
7年後、再び女性を狙った殺人事件や殺人未遂事件が発生し、いずれも被害
者は靴工場の従業員だった。収監中のレーティが殺人を行えるはずはなく、
担当のボータ刑事はレーティは冤罪ではないかと思い始める。この点はネタ
バレしておくがレーティは冤罪である。レーティは拷問を受け罪を認めたの
だ。当時のハンガリーは社会主義国で、そのせいもあるのだと思うが、速や
かな逮捕、起訴、裁判が要求されたのではないだろうか。実際レーティの自
供には矛盾が多い。
ボータ刑事とシルマイ検事は冤罪を確信し必死で捜査に当たる。無実を信じ
るレーティの妹も、面会の度に再審請求をするように勧めていたが、レーテ
ィは気力をなくしていた。物語はとことんシリアスで暗い。共産主義が背景
にあるせいもあるだろう。観る人によっては多少退屈に感じるかもしれない。
私はおもしろかったが。そして割と早くに真犯人はわかる。だが警察はなか
なかこの男に辿りつけない。警察を嘲笑うかのように殺人事件は続き、小さ
な街は恐怖に陥れられる。
捜査を組むベテランのボータ刑事と若く意欲的なシルマイ検事のバディもの
という側面もあるのだが、そこはあまり強調して描かれず、淡々と物語は進
行していく。レーティが刑務所の中で手首を切って自殺を図るシーンと、真
犯人の妻が夫が犯人であると気づき、でも警察に言えずに苦悩するシーンは
とても重たく、胸に迫るものがあった。最後まで暗い映画で、結局皆が不幸
のまま終わってしまう。ラストシーンもゾッとする。普通と言えば普通と言
えなくもない映画だが、私には見応えがあった。




映画評論・レビューランキング

人気ブログランキング





コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ノエルの誕生日 | トップ | ザ・ボート »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (asateru0628)
2022-09-17 04:36:40
最後まで暗く重い映画だったのですね。
これを読んで「ひまわり」を思い浮かびました。
あれも確か…社会主義かしら?
凄く若い頃みたけど場面がカットされているのかしらと思った場面もありました。
返信する
Unknown (杏子)
2022-09-17 08:21:30
>asateru0628さん
コメントありがとうございます。暗い映画でしたね〜。
「ひまわり」は私も何10年も前に観たのであまり覚えていないのですが…
あれは恋愛映画というか夫婦の愛の映画でしたから、この映画とはだいぶ違いますね。
返信する
時代が1950年代後半から60年代だというのが興味深いです。 (ウラジーミル・アスポン)
2022-09-22 11:21:10
アーコシュ・レーティが収監中なら犯罪を
行えるはずがないので、収監前の犯罪も含め
レーティが犯人じゃないという事になりそうですよね。

でも被害者と交際していたという事実があるなら、
疑られて当然だと思いますけど…。
別れ話等のもつれで犯行に及んだと思われますよね。

でも、レーティは事情徴収をうけた際、
何もやっていないのに認めたのは、
きっと警察からボコボコにされて
仕方なく認めたんでしょうね。

1957年は今から65年も前。
第2次対戦が終わって12年。

でも未だ世の中は戦前ひきずっているので
警察は横暴なんでしょうね。

7年後はだいぶ世の中の雰囲気かわっていると思います。
60年代半ばと50年代後半はわずか7年ですが、
相当、差があります。

昭和の本を集めていますが、この時代の5年はすごく変化しています。

刑事たちも社会主義国家とはいえ戦前の古い時代の雰囲気から抜けて
レーティの無罪を信じていて、冤罪なら何とかしてあげたいと思うでしょうね。
ボータ刑事と知るまい検事は冤罪を確信して
必死で捜査にあたるんでしょうね。
返信する
Unknown (杏子)
2022-09-22 22:45:16
>ウラジーミル・アスポンさん
コメントありがとうございます。私も時代が興味深いと思いました。
ハンガリーはまだ社会主義、共産主義の時代で、党員とかいうセリフが出てくるんですよね。
あの暗い時代を象徴するような陰惨な事件、おもしろかったです。

レーティは被害者と一緒に帰っていっているところを目撃されてますから、疑われますね。
でも犯人ではなかったんですよね…警察からひどい取り調べを受けて認めてしまいます。
こういうことは昔の日本でもあらりましたね…

ボータ刑事とシルマイ検事はレーティの無実を信じて、緻密な捜査に当たります。
真犯人の動機というか、性癖みたいなものが気持ち悪いです。

ハンガリーでは大ヒットした映画だそうです。私もおもしろかったです。
返信する

コメントを投稿