猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

私の知らないわたしの素顔

2020-03-07 22:15:05 | 日記
2019年のフランス映画「私の知らないわたしの素顔」を観にいった。

パリの高層マンションに暮らすクレール(ジュリエット・ビノシュ)は50代の美しき
大学教授。彼女にはリュド(ギヨーム・グイ)という年下の恋人がいるが、ある日あっ
さりと振られてしまう。クレールはリュドの周辺を探るためにFacebookを開くが、
これが全ての始まりだった。「24歳のクララ」に成りすました彼女は、彼の友人で
ルームメイトでもあるカメラマンのアレックス(フランソワ・シビル)とFBでつなが
り、チャットを始める。だが、アレックスと「クララ」が恋に落ちてしまったことで、
事態は思わぬ方向へ展開していく。

ジュリエット・ビノシュ主演の心理サスペンス。物語はクレールが精神分析医のボー
マン(ニコール・ガルシア)に促され、自分の話を始めるところから始まる。大学で文
学を教えているクレールは、長年連れ添った夫と離婚し、息子2人と暮らしているが、
息子たちはクレールのマンションと元夫の家を行き来している。息子たちが元夫の家
で過ごす週末は、クレールは年下の恋人リュドとの逢瀬を楽しんでいたが、ある日振
られてしまう。Facebookでもリュドに承認拒否されたクレールは、24歳のクララと
いうアカウントを作り、リュドの動向を探るために彼の友人のアレックスに近づく。
そしてチャットを続けるうちに、クレールはアレックスに、アレックスは「クララ」
にはまっていく。
女性としての旬を過ぎ、老いに向き合わざるを得ないクレールの心情を、ジュリエッ
ト・ビノシュがとても繊細に演じている。アレックスに顔が見たいと言われ、それを
拒否できなかったクレールは適当な若い女性の写真を送るが、それによってアレック
スはますますクララを好きになってしまう。クララに成り切ったクレールもアレック
スへの想いは募るばかりだ。メールで電話で、お互いを求めるようになってしまうが、
会いたいというアレックスの要望に応えられないクレールは苦悩する。
私には他人に成りすまして誰かとつながるというのは理解できない。違う自分を演じ
ることで楽しさもあるのかもしれないが、結局虚しさが残るのではないだろうか。ク
レールのボーマン医師への話と現実の状況が並行して物語は進行していく。冷静沈着
なボーマンはクレールが抱える心の傷を探っていく。この2人のやり取りがとてもい
い。
前半は心理サスペンスだが後半は心理ドラマという感じになってくる。クレールの離
婚に関するエピソードにはとても同情する。恩を仇で返されるというのはこういうこ
とを言うのだろう。その話をボーマンにした時のクレールの涙には胸が痛くなる。ク
レールは徹底的に痛めつけられていたのだ。SNS時代だからこその映画だと思う。私
たちの日常に潜む落とし穴というのか。そしてとてもフランス映画らしい映画だと思
った。おもしろかった。




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