猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

浮き雲

2014-12-19 03:05:04 | 日記
1996年のフィンランド映画「浮き雲」。
ヘルシンキ。かつての名門レストランで給仕長を務めるイロナ(カティ・オウティネン)と、市電の
運転手ラウリ(カリ・ヴァ―ナネン)の夫婦は、慎ましくも幸せな生活を送っていた。
ある日、ラウリは不況のためリストラされてしまう。イロナも、レストランが大手チェーン店に乗っ
取られ、解雇されてしまい、夫婦揃って職探しをする毎日になってしまう。

アキ・カウリスマキの人間賛歌である。夫婦がほぼ同時期に職を失い、生活を立て直すまでが
ユーモラスに描かれている。今はどうか知らないが、この頃のフィンランドの不況も大変だったん
だなあ、と思う。
夫のラウリは長距離観光バスの運転手に雇われるも、健康診断で片耳に異常が見つかり、職
だけでなく運転免許まで失い、ショックで卒倒してしまうなど、悲しくもおかしい。
妻のイロナも、場末の安食堂に就職するが、名門レストランの給仕長をしていた彼女にとっては
やりがいのない辛い仕事である。おまけに賃金もまともに支払われない。
ハローワークのようなところも出てくるが、こういうところって日本と同じく本当にお役所仕事なん
だなあ、と思ってしまう。職探しを経験したことのある人なら、この映画はきっと身に詰まされる
と思う。
やがて夫婦にも希望の光が見えてくるのだが、そう簡単にはいかない。けれども、カウリスマキの
夫婦を見つめる目は暖かい。ラストは感動的だ。とても好きな映画である。



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