猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

髪結いの亭主

2014-08-05 02:42:34 | 日記
1990年のフランス映画「髪結いの亭主」。
アントワーヌ(ジャン・ロシュフォール)は回想する。
12歳の夏、ノルマンディーで母の手編みの水着で遊んだことを。石鹸とコロンの
匂いに包まれた理容室、太った美人のシェーファー夫人の理容室に通って、理容師
と結婚すると決めたことを、それを告げて父に平手打ちされたことを。
中年の頃、勤めていたイジドールの理容室を譲ってもらい、1人でサロンを経営
しているマチルダ(アンナ・ガリエナ)に一目惚れし、調髪してもらったその場で
求婚したことを。ささやかな結婚式のことを。常連客や飛び込みの客が店に来る
さまを。友達も、子供も、仕事もいらない。アントワーヌにとって大切なのはこの
サロンとマチルダだけ。平穏な10年が過ぎた。

不思議な恋愛映画だ。日本で最初に公開されたパトリス・ルコント作品である。
アントワーヌは仕事をしていない。理容室で働く妻のマチルダを眺めているだけだ。
それ程にマチルダを愛しているのだ。彼は理容室とマチルダがいれば他は何もいら
ない。子供も欲しくない。ちょっと異常な感じの愛だ。でもこの映画を観ていると、
異常に見えないから不思議だ。ゆっくりと流れる時間の中で、2人は愛し合って
いる。お互いだけを想っている。その様子に、不思議と惹き込まれていくのだ。
客はアントワーヌを「ご主人」と呼ぶが、実際は店の主人ではない。ただの亭主だ。
子供の頃から夢に見た、理容師の亭主になれたのだ。こんな幸せなことはない。
静かな静かな映画だ。そして官能的で、悲しい。
アントワーヌ役の人は「列車に乗った男」にも出演していたんだな。この映画も
良かった。
「髪結いの亭主」、好きな映画だ。



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