猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

異端の鳥

2020-10-24 22:13:21 | 日記
2019年のチェコ・スロバキア・ウクライナ合作映画「異端の鳥」を観に行った。

第2次世界大戦中、ホロコーストを逃れて東欧のある村の叔母の元に1人で疎開
した少年(ペトル・コトラール)。しかしある日、その叔母が急死した上、火事で
叔母の家も焼失し、少年は行き場を失ってしまう。たった1人であてのない旅に
出た少年は、行く先々の人々から異物と見なされ、ひどい仕打ちを受ける。それ
でも少年は、何とか生き延びようと必死でもがき続ける。

ポーランドの作家イェジー・コシンスキの小説の映画化。第76回ヴェネツィア
国際映画祭ユニセフ賞受賞作品。説明がないのだが恐らくユダヤ人である少年は、
東欧のどこかの村に住む叔母の元に1人で疎開する。叔母との生活は孤独なもの
だった。少年(11~12歳くらい)は村人たちにいじめられる。ある日叔母が病気
で急死し、家も火事で焼けてしまい、少年は1人で旅に出ることになってしまう。
あてのない放浪の中で少年は色々な人に出会い、面倒を見てもらったりするが、
転々とする中でとても過酷な目に遭う。
全編モノクロームの暗い映像で、セリフも少なく、物語もとにかく暗くて悲惨だ。
目を背けたくなるような残酷なシーンがたくさんあり、少年の身の上を思うと辛
くなってくる。彼はほとんど人間扱いされていないのだ。野宿をしたり誰かの家
で世話になったりしながらも、とことん不幸が彼を襲う。いじめ、暴行、性的虐
待、動物虐待と見るに堪えないシーンの連続である。過酷な思いをしていく中で
動物好きで気弱だった少年は少しずつ変わっていく。
少年が行く先々で出会う村人たちは、彼の髪や瞳や肌の色が自分たちと違うこと
で彼を差別し、異物と見なす。貧しく純朴そうに見える村人たちだがおかしな人
がとても多く、狂人だらけと言ってもいいくらいだ。少年を殺さず見逃してくれ
たドイツ兵や、心優しい司祭など、まともな人にも出会うのだが、平穏な生活は
続くことはない。これでもかという程少年は不幸に見舞われる。
この映画の原題は「ペインテッド・バード(The Painted Bird)」というのだが、
タイトルを象徴するようなシーンがある。少年がしばらく世話になっていた鳥売
りの男が、1羽の小鳥にペンキを塗って空に放す。群れの鳥たちと合流しようと
する小鳥だったが、色を塗られた小鳥は群れの仲間たちにとってもはや異物であ
り、小鳥はつつかれ羽をもがれ、無残な姿で墜落する。少年の存在はこの小鳥な
のだ。残酷なシーンだと思った。男が死んだ後、少年は売り物の鳥たちを皆カゴ
から出して空に放った。少年の未来はどうなるのだろう。2時間49分という長い
映画だが、とてもおもしろかった。




映画評論・レビューランキング

人気ブログランキング

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 1922 | トップ | ちゃぴ、3年 »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (jagataro)
2020-10-26 11:26:34
観るのにパワーが必要な作品ですね。見終わって、自己嫌悪とともに猛省を強いられそうな内容です。
どこへでも飛んで行けそうに思える鳥でさえ……ツライ。😿
返信する
Unknown (杏子)
2020-10-26 16:04:55
>jagataroさん
コメントありがとうございます。そうですね、気合を入れて観なければならない映画です。
フィクションですが、こういう子供は実際にいたのかもしれない、と思わせられます。
ペンキを塗られた小鳥が仲間たちに攻撃されて死んでしまうシーンは辛かったです。
人間も人間以外の動物も、自分たちとは見た目が違うものを受け入れないのですね…
返信する

コメントを投稿