猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

ELLE エル

2017-09-05 23:51:06 | 日記
フランス映画「ELLE エル」を観にいった。

ビデオゲーム会社の社長として成功を収めているミシェル(イザベル・ユペール)は、
パリ郊外の高級住宅地に独り暮らし。ある午後、自宅で覆面の男に襲われた彼女は
警察には通報せず、何事もなかったように、訪れた息子ヴァンサン(ジョナ・ブロケ)
と夕食を共にする。以前は大麻を売っていた息子だが、最近ファストフード店で働
き始め、妊娠中の恋人ジョジー(アリス・イザーズ)との新居探しに夢中になってい
る。しかしミシェルは、常識外れなジョジーの目的は母親である自分の財産ではと
疑っていた。翌日、いつもと変わりなく出社したミシェルは、新作ゲームの社内プ
レビューで容赦なくダメ出しをする。担当ゲームデザイナーは激しく反発するが、
彼女は意に介さなかった。その夜、帰宅した彼女に、見計らったかのようなタイミ
ングで犯人からと思われる卑猥なメールが届く。

とてもフランス映画らしい映画。意外にも監督はポール・ヴァーホーヴェンなのだ
が、この人オランダ人だしね。主人公のミシェルは知的だが、頭の神経がどこか1本
切れたような人だ。白昼自宅で覆面をした男に襲われたというのに、警察に通報す
るでもなく、淡々と割れた食器などを片付けたり、宅配フードの注文の電話をかけ
たり、その後息子と普通に食事をしたりする。更に犯人から卑猥なパソコンメール
が届いても、防犯グッズを購入しただけ。彼女は10歳の時にある事件に巻き込まれ、
それ以来警察不信に陥っているのだ。
ミシェルは元夫のリシャール(シャルル・ベルリング)、会社の共同経営者でもある
親友アンナ(アンヌ・コンシニ)、彼女の夫ロベール(クリスチャン・ベルケル)との
ディナーの席で、襲われたことを淡々と打ち明け、皆が驚いて色々と心配をしてく
れているのに、「この話はこれでおしまいよ」と平然と言ってのける。しかも彼女
はロベールと不倫関係にあるのだ。更に、向かいの家の魅力的な夫、パトリック(
ロラン・ラフィット)のことも気になり始める。
ミシェルは10歳の時の体験で、どこか性格が歪んでいるのだろう。母親とも不仲で
ある。その母親も母親なのだが。ミシェルは自分の周辺にいる男たち皆が怪しく見
えて、不穏な空気の中で過ごしていく。だがこの映画は「犯人は誰なんだろう?」
と推理するミステリーではない。犯人を突き止めてからもミシェルの異常とも言え
る行動は続くのだ。常識では考えられない彼女の言動は、彼女が子供の時にいかに
大きな心の傷を負ったのかを物語っている。私はミシェルに共感はできないが、あ
あいう体験をすると、道徳観念が歪んでしまうのかもしれない、と思う。
イザベル・ユペールはジャンヌ・モローのような女優になるのではないだろうか。
今でも充分大女優と言えると思うが。おもしろかったけど、ミシェルの息子ヴァン
サンのことだけは納得できない。彼は幸せになれる選択をしたとは思えない。ラス
トのミシェルとアンナの会話はいかにもフランス映画らしくて好きだ。




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コメント (4)
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