ちゃちゃ・ざ・わぁるど

日記と言うよりは”自分の中身”の記録です。
両親の闘病・介護顛末記、やめられないマンガのお話、創作小説などなど。

創作小説 SUNSET CHAPTER12 PART.11

2012年06月28日 08時26分29秒 | 創作小品
 「そうだ! みんなで写真とりません?! アタシちょうどデジカメ持ってるんですよ!」
アタシはいいコトを思いついたと自画自賛したくなった! バイト初めて1年以上、せっかくみゆ希さんとも知り合えたのに、今までみんなで写真を撮ったことはなかったもの。ゼミの打ち上げの時についでに撮ったことはあるけど、あれはあくまでゼミの写真だ。
「いいねえ! じゃあまず俺とみゆ…」
言い終わる前にセンセイは店長にお絞りを投げつけられた。とーぜんだっつーの! センセイってバカ。
「いいねえ! それ! リョウちゃんナ~イス!」
みゆ希さんが即座に賛成してくれた。
「あ、あたし瞬間いいネーミング思いついちゃった! お店の名前がSUNSETでメンバーはココの家族そのものだから、名づけてサンセット・ファミリー!! どうよ?!」
「………それってサンセット・メモリーのパクリ?」
店長のツッコミにみゆ希さんは視線を上げた。
「あれれ~? 道理で語呂がいいと思った…。」
「ま、まあいいじゃないの! サンセット・ファミリー。うん、いい感じだよ。」
おじ様がフォローしてくださって、みゆ希さんはえへへ、と笑った。
アタシはデジカメを取り出して、カウンターに載せた。
「ココ置いてセルフでみんなはいりましょ!え~っと…。店長も清司君もみんなの方回ってください!」
「あ? ああ…。」
店長はちょっと照れくさそうに、でも言う通りに回ってくれた。
 「やっぱ、主の店長が真ん中で、その左にみゆ希さんね。右に和佳菜さんと、三人は座って!テーブル席の椅子とって。和佳菜さんの後ろにおじ様おば様、みゆ希さんの後ろにセンセイと清司君が入って~。ソウソウ!! おじ様! そこでおば様の肩を抱く!」
「お? え?! …いやあ、照れるねえ、この年でそういうの。」
「年はカンケーない! おじいちゃんおばあちゃんになってもやるべきです!」
アタシはぐいぐい突っ込んでやった。
「ははは…。逆らっちゃ恐いね。じゃあ…。」
おじ様は照れながらおば様の肩を抱き寄せた。うんうん、イイ感じ!
「で! 和佳菜さんはお兄ちゃんの腕を取る!」
「あ…は、はい!」
「涼香って…鍋奉行ならぬ写真奉行だな。そんなのがあるとは知らんかった…。」
「文句言わない!」
アタシが意地悪く言うと、みゆ希さんはニッコニコ笑って
「じゃあ、アタシはカズとキスするね?!」
「おいっ!!」
う…さすがみゆ希さんだ…。しかもやりかねないよ、この人は。
「いえ…さすがにそれはいいです。失恋した心の傷にうずきます。」
冗談半分、本気半分…。しくしくしく…。
「ウソウソ! んじゃ、こんな感じで。」
と、みゆ希さんは店長の肩にもたれた。
「はい…その程度で。いちゃいちゃするのは二人きりの時にしてください…。んじゃあ…行きますよ…。10秒間瞬きしないでくださいね~!」
「リョウちゃんはどこ入るの?!」
「決まってんでしょ?! 店長とみゆ希さんの間ですっ!!!! はいっ! 1たす1はあ!」


 昼食とも夕食ともつかない食事会が終わり、テツの勧めで俺は和佳菜たちを藤沢駅まで送ることになった。テツと涼香と清司の三人で後片付けと洗い物はしてくれることになり、更にみゆ希も涼香いわく
「将来の家族候補でしょ? 一緒に送ってきたらどうですか?」
と押されてついてきた。と言っても車に便乗だけど。(一応5人乗り。軽ではない。)
 車中、和佳菜たちは本当に楽しかったと言ってくれた。殊に何と言っても母さんが
「こんなに幸せな気持ちになれたのは初めてよ。」
と、喜んでくれたのは、俺は嬉しいけれど複雑でもあった。だって、これまでは俺のせいで寂しい思いをしてたんだろうから…。
 「母さん…すみません。俺がもっと早くあなたと話していればよかったのに。長年苦しめてすみませんでした。」
でも、それを引き取ったのはお父さんだった。
「和行君、良心が咎めるのはわかるけれど、君が気に病むことはないよ。それができるようになるには相応の時間が必要だったんだよ。君だってかなり苦しんだのだろう? 今がちょうど潮時だったんだよ。ねえ、美和さん。和行君は悪くないよね。もちろんあなたもだよ。」
「あなた…。」
「それに、もういいじゃない。こうして仲良くなれたんだし。」
「そうですよ。もうくどくどいいっこなし! て、他人のあたしが口出しすることじゃないか。」
みゆ希が助け舟を出すように言った。
「いやいや、みゆ希さんのおっしゃるとおり。もういいよ。ね? それよりこれからの話をしようよ。和行君、それでいつ式をあげるつもり?」
「え? え?! イヤ…!!」
急に振られて俺は慌てた。もしもし~! 運転誤ったらただじゃすまないんですけど!
「そんな話は全然まだ! まだ付き合いだして間もないし、今はまだ何も…。」
「いやあ、アタシはいつでもいいんですけどね~! 親がうるさいし。あたしも妹がいるんですけど、もうとっくに嫁に行ってて子どもも二人目だから、風当たりがきつくってね~! なのでカズ、急いでくれると助かる。」
「ちょ…いや、いくらなんでも急展開過ぎるって言ったでしょーが!!」
「あら…10年前からお付き合いしてたのではないのですか?」
母さんが怪訝そうな顔をした。ヤバイ!
「お母さん、兄さんとみゆ希さんはお母さんが見たあのテレビ放送のときに偶然再会したんだって。それからだって。あのテレビのアナウンサー、小城さんだったでしょ?」
「ああ、それで…。それではずっと会っていなかったのですか?」
「ええ、まあ…卒業後はなんとなくそれっきりになってて…。」
――言うなよ、みんな。俺が施設からフケたことや、みゆ希をほっといたことや…特に10年前俺が自分を抑えられなかったことは…。それは母さんは知らないほうがいいことなんだから。知ればまた自責の念を増やしてしまう。それを察して、みゆ希は
「そーなんですよ! 気にはなってたんですけどね、あたしも大学やアナウンサーになることで手一杯で…。でもって再会した時思いが復活しちゃったっていうのかな~。あはは、照れちゃうなあ~!」
と、適当に言ってくれた。やれやれ…。
 「そうかあ、まだまだお互いを知らなきゃってことか。じゃあ、一足先に美和さん、僕らはよりを戻したいね。」
「あなた…。」
「本気で考えてね。」
「……ええ。そうね…考えます。できるだけ前向きに。」
「ホント? 良かった!! お母さん、絶対戻ってきてね。待ってるよ。」
「ええ…。」
そう、仲が悪くて別居したわけじゃない。それもこれも俺のためじゃないか。もうそんなのいいから、ベストの状態に戻ってくれ。
「母さん、俺からも頼みます。俺のためはもういいから、今度は和佳菜のために、ね。」
「ええ。…ありがとう。みんな、ありがとう…。」
 母さんは少し涙ぐんだ。そうだ…もう解放されてくれ。自分を許してやってくれ。それが今一番俺が望むことなんだ。
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