ちゃちゃ・ざ・わぁるど

日記と言うよりは”自分の中身”の記録です。
両親の闘病・介護顛末記、やめられないマンガのお話、創作小説などなど。

創作小説 SUNSET CHAPTER12 PART.9

2012年06月02日 06時42分17秒 | 創作小品
 あれ? テツさん?
「だーいじょーぶだよ! カズなら心配いらないって!」
と、豪快に笑って言った。
「アイツ、繊細だけど図太いから。ヘタレだなんて言ってるけど強いから。クールだけどものっそい優しいから。めっちゃお人よしだから。全然大丈夫だよ。」
「センセイそれ理屈になってない…。でも、店長こないだだってVVRで倒れたでしょ? センセイいあわせたじゃないですか。また発作とか起こしたりしないかな…。」
「ダイジョブだって。すぐに元気に戻ってくるよ。おかあさんといっしょにね。」
「んんん~…。」
と、涼香さんはちょっと不審そうにテツさんを見返したけど…急にぱあっと明るい顔になった。
「そーですね。店長、ヒト食ってますもんね。かなり変わり者だし、アタシの心配なんていつも杞憂だし、心配する人の心配するような人だもん。」
「そうそう。もうすぐにでも…。」
――テツさんが言いかけたまさにその途端、ドアが開いた。テツさんの予言は思い切り当たった。
「な…なんでみんな来てるんだよ…! まだ正月休み中だぞ! お前ら何しに来てんだよ!」
開口一番呆れて言う井上さんはいつもと全然変わりなく、そしてすぐ後ろに中年の上品な女の人――きっと絶対お母さんを連れていた。その腕をとりながら…。


 ほら、やっぱり大丈夫だった。イヤ…本音いうとちょっと心配だったんだけどね?! この人がウワサのお母さんか…。全然、すごく優しそうな人じゃない。いろいろあったのは確かだけど、今現在進行形で、うまくいってる感がある。
 まず田口センセイが立ち上がって言い訳…
「いやあ、営業は明日からだろ? 新年会やるなら今日しかないじゃん。俺は夕べ帰ってきたし…あ、これお土産ね。」
と、センセイはお菓子らしい箱と萩焼の箱を取り出した。中身は湯のみみたい。
「菊川君はさっき帰ったそうで、じゃあ二人で行くべ、と思ってさ。」
「絶対そのうちお前ら変な噂立つぞ…。」
店長に突っ込まれたけど、アタシは首をブンブン振った。
「ジョーダンじゃないですよっ!! だからセンセイに免許とってって言ってるのに…。」
うう…シクシク…。
 それはともかく…。
「えーっと、カズのお母さんですよね。ワタクシ彼の親友の」
「バカ友だ」
「田口哲也と申します。いつも彼にはよくお世話しています。」
「ぶっとばすぞ、お前。」
まったく…。おば様はちょっと笑って会釈した。
「あ、アタシはバイトの菊川涼香です。店長にはめっちゃめちゃお世話になってます。田口センセイほどじゃないですけどね!! それからあっちが…」
と、アタシは清司君を紹介する。
「あ、あの…松田清司です。僕が井上さんには一番お世話になってます。住み込みで働かせてもらってて、公私共に…ホント僕はめちゃめちゃお世話になりっぱなしです。」
そう言って清司君はペコッと頭を下げた。おば様はアタシ達にむかって丁寧に
「そうですの…。私が何もできない分、どうかこの子によくしてやってくださいね。」
って…。うわ! ホントーにいいお母さんじゃないの! ウチのお母さんよりよっぽど人間ができてそうだ(お母さん、ゴメンナサイ)!
 「お母さん…。」
和佳菜さんがちょっと心配そうに、ちょっとホッとした顔で立ち上がった。一緒におじ様も。
「和佳菜ちゃん…。それに佳介さんまで来てくれてたの? ごめんなさいね、ずいぶん心配をかけたみたいね。」
「ううん…。あの…兄さん、ごめんなさい…。ホントに…その…。」
「…まったくだぞ。心配するなって言ってんのに…。もう約束やぶんなよ。」
「まあまあ、和行君…。そう怒らないでやって。悪気はないんだよ。」
「お父さんまでなんでいるんですか?! 和佳菜を止めといてくださいって頼んだのに。」
「ああ…ごめん。いや、僕も実際ちょっと気がかりでさ…、つい…。ワカを追いかけるの口実に来ちゃった。信用しないわけじゃないんだけど、その、ね…。」
店長は少しすねたように文句を言い、おじ様は申し訳なさそうに弁解した。よくわかんないけど店長はお二人に来ないでくれと言ったんだよね? 理由は…なんだろう? 
 おば様は感じ入ったように
「あなた…。和佳菜ちゃん…。和行さん、許してあげて。二人とも私たちを心配してくれたのですから。」
「まあ、そうですけど…。」
あれれ、店長ってば親に咎められた子どもの顔だよ…。
 ああ、そっか! わかった…。もう、店長ってば可愛いとこあるんだなあ~。良く見れば目が赤いしちょっと腫れてるよ。きっと泣いてたんだ…それもかなり。うん、それは仕方ないと思う。でもって、店長、それが恥ずかしいんだ。その顔を見られたくなかったんだ。店長ってクールなええかっこしい、だもんね。
 アタシがニヤニヤしたもんだから、気づいた店長はジト目をアタシに向けた。
「涼香、ナニ?」
「いいえ~。なーんでも! 店長もヒトの子なんだなあ~って思っただけ。」
「じゃあ俺は何の子だったんだよ?!」
「えへへ。」


・・・TO BE CONNTINUED.
コメント
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