犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

性奴隷とは(5)

2014-04-12 23:38:58 | 慰安婦問題

 韓国で、監禁売春が問題になっていたころ、韓国のマスコミにはほとんど取り上げられませんでしたが、同胞の国、北朝鮮においても深刻な性奴隷問題が持ち上がっていました。

 1999年から1年半、北朝鮮に人道支援のために滞在したドイツ人医師、ノルベルト・フォラェン氏は、北朝鮮から国外追放を受けたあとに著した著書で、次のように書いています。

 ドルに換算するとおよそ三百ドルで買われる美しい北朝鮮の女性。栄養が足りないにもかかわらずまだ働けそうに見える少年。国境地帯の現代の「奴隷市場」は、裕福な中国商人にとって、さしずめパラダイスだ。

(中略)

 小さな村でひとりの人買いブローカーに会った。彼は大まじめでそれを難民救済と呼び、人道援助者と称していた。注文を受けると、彼は北朝鮮に向かって出発し、お望みの「商品」を探す。たいていは若く美しい女性たちだ。彼女たちは、幸せにぜいたくに暮らせると誘いだされ、夜中に国境を越える。そうでなければ怖くて絶対に越えられなかっただろう。ブローカーは-この男はたまたま北朝鮮から逃げてきたそうだが-国境の役人と顔見知りで、賄賂を使ってぐるになっていることも多い。こうしてひとつの輪が形成されているのだ。そこには地元の警察官、中国の小さな町の酒場の主人やそのほかの有力者などが加わっている。若い女性は売春宿に、少年はベルトコンベヤーの前に。そのうちの何人かは-抵抗したり逃げだそうとしたところを見つかって-ゴミ捨て場に死体となって横たわる。

(ノルベルト・フォラツェン『北朝鮮を知りすぎた医者 国境からの報告』草思社、2001.11)

 フォラツェン氏は、北朝鮮における人権蹂躙を告発するために、韓国で精力的に活動します。ところが、ときあたかも金大中大統領が「太陽政策」を掲げて、対北宥和政策を行っていた。氏は、韓国の特にマスコミから、意外な冷遇を受けます。

 ソウルでは数えきれないほどインタビューを受けただけでなく、学校や教会ではさらに多くのスピーチをし、韓国の議会でもスピーチをした-そして、あらたに奇異なことがわかった。それは、この南の兄弟国では北朝鮮の悲惨な状況について本心から関心のある人はだれもいないということだ。とりわけジャーナリストにあまり関心がなかった。

 金大中の政策を引き継いだ盧武鉉大統領は仕方がないとして、そのあとの李明博大統領になってからも、韓国は北朝鮮の人権問題を見て見ぬ振りでした。

 北の状況に改善が見られないことは、今年の2月に公表された国連の報告書でも明らかです。


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2 コメント

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Unknown (トムヤム)
2014-04-10 22:20:28
韓国は慰安婦を普遍的人権問題として、日韓二国問題から国際問題にしようとしたのだと思います。
米国における慰安婦像設置などその戦略は成功したようにもみえましたが、昨今、国連の北朝鮮の人権問題が大きく取り上げられ、70年以上も前の慰安婦問題と現在目と鼻の距離で起きている北朝鮮の人権問題への取り組みのバランスの悪さが、国際的にも鮮明になってきたようにも思えます。

そういった空気を読んだのか、挺対協はベトナム軍における韓国軍の非人道性を批難し始めましたが、やはり北朝鮮には言及しませんね。
朝鮮戦争のときの (犬鍋)
2014-04-15 00:17:15
韓国軍の慰安所も非難してほしいものです。

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