
写真:韓国大法院での判決の様子(中央日報)
野党ともに民主党の大統領候補、李在明(イ・ジェミョン)氏が、公職選挙法違反容疑で起訴され、一審で有罪、控訴審で逆転無罪判決が下されたことは、前に紹介しました。
韓国野党代表、逆転無罪
検察はただちに上告。裁判は大法院(最高裁)に回っていました。
李在明氏の有罪が大法院で確定すれば、李氏は被選挙権を剥奪され、次の大統領選に出られなくなります。
大法院判決は5月中旬とみられていたのに、突然、5月1日に判決が下ると発表されました。控訴審判決(3月26日)から、約1か月後。
一審と控訴審の審理に2年6か月かかっていたことを考えると、異例の早さです。もともと最高裁は、公職選挙法の審理は迅速に進めるべきで、一審6か月、控訴審・上告審はそれぞれ3か月以内に判決を下すよう指針を出していました。
公職選挙法に違反して当選したのに、判決が確定しない間に、議員の任期をまっとうするようなことが多発していたからです。
一審、控訴審はその指針を守らず、ずるずると「引き延ばし」をしていました。大法院は、範を示す意味もあったんでしょうか、指針よりも早く、一か月で判決を出したのです。
マスコミは、控訴審で無罪が言い渡されて以降、大法院でも無罪判決がでるだろうとの予測が大勢で、保守系メディアもあまり注目していないようでした。
ところが大法院は、李在明氏に対し、「控訴審判決を破棄、有罪趣旨の差し戻し」という判決を下したのです。
控訴審判決は、「無罪」という結論を先に決めていて、そのための屁理屈をこねたようなものでしたから、大法院判決はまっとうな判決だと思います。
これから控訴審のやり直しをするわけですが、「有罪趣旨」ですから、「有罪」が覆ることはあり得ない。
有罪確定なら、李在明氏の被選挙権は剥奪されます。
ふつうなら、李在明氏が大統領選不出馬を表明するところですが、そうならないのが韓国です。
大法院判決が出てから、控訴審のやり直しが行われ、判決が確定するまでに1か月以上かかります。裁判所がてきぱきと進めても、李在明が出廷拒否など、あらゆる遅延戦略をとるだろうからです。
大統領選挙の投票日は6月3日と決められており、李在明氏は大法院判決の4日前、野党の党内選挙で大統領候補に選出されていました。得票率は実に90%。
与党の候補はまだ決まっていませんが、世論調査では、李在明氏が45%で、他の候補を圧倒。
今回の大法院判決で、野党は衝撃を受けているようですが、李在明氏が候補を降りる気配はない。
李在明氏と野党の理屈はこうです。
差し戻し控訴審の有罪判決が確定するのは大統領選挙のあと。「被選挙権剥奪」はすでに行われた選挙には関係ないから、大統領選挙は有効。李在明氏は、公職選挙法以外にもたくさんの刑事訴追をされて現在審理中だが、大統領には「不訴追特権」があるので、これらはすべて無効になる…
でも、法曹界には、「不起訴特権」が「起訴」についてだけのものか、起訴後の審理も含むものか、いろんな主張があります。
もし大統領になったとしても、この議論が熾烈化し、国論が二分されるのは目に見えています。
与党はすでに「李在明氏に大統領候補の資格がない」と、批判のボルテージを上げています。
与党はまだ候補一本化ができていませんが、一本化できた暁には、今までの予想のような李在明氏の圧勝ではなく、前回同様の接戦になるかもしれません。
世論調査では、大統領候補として一位である一方、「非好感度」でも一位という結果がありますから。
大統領選挙がにわかに面白くなってきました。
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