犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

苦し紛れの「京郷新聞」

2023-11-03 14:40:06 | 慰安婦問題
 『帝国の慰安婦』裁判の大法院判決が出た後、韓国の左派新聞、『ハンギョレ』や『京郷(キョンヒャン)新聞』などは、事実を簡単に伝えた後、沈黙を守っています。

 有罪が出たときのために準備していたであろう記事が使えなくなったからでしょう。また、きわめてまっとうな判決だったため、「判決は不当」などの論陣を張りにくいということもあるのでしょう。

 京郷新聞は、標的を日本に変えて、苦し紛れの記事を載せました。

2023.10.27「京郷新聞」
『帝国の慰安婦』名誉毀損無罪…日「韓国司法府、政権によって揺れる」

 日本軍慰安婦被害者が自発的に売春をしたという趣旨の表現などで裁判になっていた朴裕河(パク・ユハ)世宗大名誉教授を名誉毀損罪で処罰することができないという大法院(最高裁)の判断について、日本で歓迎の声が出ている。「韓国の司法府は政権によって揺れる傾向が強い」と、嘲笑交じりの批判も提起された。

 木宮正史東大教授は26日、産経新聞とのインタビューで「朴教授の名誉毀損罪を認めなかった韓国最高裁判決は妥当だ」とし、「朴教授は韓国と日本の間に自らを置いて双方の歴史認識を折衷する意味で歴史的な解釈を下したもの」と主張した。

 ただ、木宮教授は韓国司法府がこの判決に関し政派性を見せてきたと批判するコメントも出している。 裁判が2017年の二審判決から大法院判決まで6年もかかったのには、政治的状況が影響を及ぼした可能性があるというのだ。

 奥薗秀樹静岡県立大学教授も読売新聞とのインタビューで「韓国裁判所は政権の意向や国民情緒を踏まえて判断する傾向がある」とし、今回の訴訟の下級審で韓国内の雰囲気が少なからず影響を及ぼした可能性があると指摘 した。

 奥薗教授は「韓国は保守と進歩の政治的対立が激しく、司法部内部でも同様の対立がある」とし、「時の権力や世情によって司法府も揺れるという韓国の特徴は今後も変わらないだろう」とも付け加えた。

 これに先立ち、同日、大法院三部(主審ノ・ジョンヒ大法官)は名誉毀損で起訴された朴教授に罰金1000万ウォンを宣告した原審を破棄し事件をソウル高等法院に差し戻した。大法院は「原審が有罪と認めた本件各表現は、被告人の学問的主張ないし意見の表明と評価するのが妥当だ」、「名誉毀損罪で処罰するほどの「事実の摘示」と見るのは難しい」と述べた。

(以下、略)


 日本の右派新聞、『産経』や『読売』が、嘲笑交じりに「韓国の司法府は政権によって揺れる傾向が強い」と書いているというのですね。何が何でも「反日」につなげたいという思いが感じられます。

 元記事は以下。


2023年10月26日産経新聞
韓国最高裁「2つの判決は政権の意思反映」 東大大学院・木宮正史教授

2023年10月26日読売新聞
「帝国の慰安婦」朴裕河氏、安堵の表情「正しい判決が出た」…仏像判決には韓国仏教界から反発も

 別に、「嘲笑交じりの批判」とは感じませんが…。

 26日には、『帝国の慰安婦』裁判だけでなく、『仏像』裁判についても大法院の判決が下されました。仏像裁判というのは、11年前に韓国の窃盗団が長崎県対馬市の観音寺から盗んだ仏像の所有権を巡る訴訟。大法院は所有権が日本の観音寺にあると認めました。

 産経も読売も、二つの裁判を取り上げていますが、京郷は、『帝国の慰安婦』裁判だけを取り上げています。仏像裁判は、泥棒が日本から持ち去った仏像を日本に返すというもので、どう考えても反論しにくい判決だったからでしょうか。

 『帝国の慰安婦』裁判の経過は、以下の通り。

「帝国の慰安婦裁判」7周年

2014年6月、ナヌムの家の元慰安婦9人が名誉棄損で『帝国の慰安婦』の出版差し止めと損害賠償を求める民事裁判を起こす。

2015年2月、ソウル東部地裁は『帝国の慰安婦』の34カ所の削除を求める仮処分を決定。

2015年11月、ソウル東部地検は朴裕河を名誉毀損罪で在宅起訴(刑事裁判)。

2016年1月、ソウル東部地裁は、原告の主張を認め、朴教授に9000万ウォンの賠償を命じた。朴教授は控訴(民事一審)。

2017年1月、ソウル東部地裁は、検察の懲役3年の求刑に対して、無罪の判決。検察は控訴(刑事一審)。

同年10月、ソウル高裁は1審判決を破棄し、一部有罪、罰金1000万ウォンの判決。朴教授、検察ともに上告(刑事二審)。

2023年10月、大法院は原審判決を破棄、無罪趣旨で差し戻し


 この間、2度の政権交代がありました。

2017年3月10日までは、保守の朴槿恵(パク・クネ)大統領。

2022年5月10日までは、進歩・左派の文在寅(ムン・ジェイン)大統領。

現在は、保守の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領。

 朴槿恵は決して親日ではありませんでしたが、こじれにこじれた慰安婦問題の幕引きを図るために、2015年末、安倍政権(岸田外務大臣)との間で「慰安婦合意」を発表し、韓国世論の反発を買いました。

 文在寅は筋金入りの反日・親北。朴槿恵を監獄に送り込むと同時に、「慰安婦合意」を事実上白紙に戻し、合意で設置された「和解・癒やし財団」を解散しました。

 尹錫悦は元検察総長で、北朝鮮に対しては厳しい姿勢をとるとともに、日韓協調を公言、左派からは「親日」と非難されています。

 『帝国の慰安婦』裁判(刑事)に関して言うと、朴教授が起訴され、一審で無罪判決が出たのが、ともに朴槿恵政権時代。

 逆転有罪判決が出たのが文在寅政権時代。

 大法院で差し戻し判決が出たのが尹錫悦政権下。

 以前紹介した朝鮮日報によれば、大法院でこの裁判を担当した盧貞姫大法官は、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領に任命された左派の判事だそうです。18年8月、前任者の退任にともなって「帝国の慰安婦」裁判を引き継ぎ、5年2か月後に、今回の判決を下しました。

 盧貞姫大法官は、文在寅に任命されましたが、文在寅の意に沿うような判決は出しませんでした。ただ、文在寅の在任中に、文大統領の本意ではない判決を出すのが心苦しくて、判決を先延ばしにするという配慮はしたのかもしれません。

 問題は、二審、高等法院の「無罪判決」ですね。政権の顔色を窺った判決は批判されるべきでしょう。

『帝国の慰安婦』裁判はまだ終わっていません。

 刑事裁判では、これから高等法院では、差し戻し審があるはず。でも、「無罪趣旨」の差し戻しですから、無罪は確実。

 そして、刑事裁判が始まってから凍結されていた民事の控訴審(一審は朴教授に9000万ウォンの賠償を命令)、出版差し止め訴訟の控訴審があります。いずれも大法院判決を踏まえて、朴教授が逆転無罪を勝ち取る可能性が高い。

 これらの訴訟がてきぱきと進み、朴教授が法廷闘争から一刻も早く解放されることを切に望みます。

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