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日本人とフランス人「休み方」はこんなにも違う なぜフランス経済は休みだらけでも回るのか (東洋経済オンライン 2019/08/02)~

2019年08月03日 | ネット・ニュースなど
フランスでは年間5週間の休暇を取るのが一般的だという。それだけ休んでも経済が回るフランスと日本の決定的な違いとは?(写真:Masson/PIXTA) © 東洋経済オンライン フランスでは年間5週間の休暇を取るのが一般的だという。それだけ休んでも経済が回るフランスと日本の決定的な違いとは?(写真:Masson/PIXTA)

長かった梅雨もようやく開け、夏本場!今年の夏休みの計画に胸を躍らせている人がいる一方、「長期の休みを取るなんて無理」と諦めモードの人もいるかもしれません。

日本人が長期休暇を取るのに抵抗感があるのに対して、バカンス大国フランスは夏に2、3週間の休みをとるのは当たり前。ぶっちゃけそんなに休んでどうして経済が回るの?と疑問に思っている人も少なくないのではないでしょうか。そこで今回は、フランスに住む日本人女性くみと、日本に住んだ経験を持つフランス人男性のエマニュエルがこの点について語り合いました。

長期休暇中は経済が停滞する?

 エマニュエル:今日はちょうど今の季節に合った話題ということでバカンスについて話そうか。

 僕が日本に住んでいたころは、どうしてフランスは年間にあれだけの休日(7月、8月はほとんどの人が2、3週間休む)を取りながら経済や社会を維持できているの?という質問をよくされていたよ。確かに、日本でこれだけまとまった休みを取る会社員の人はほとんどいないから不思議に思うのも無理ないよね。

 くみもフランスに住み始めてからは同じような質問を日本でされていたんじゃない?

 くみ:この時期、フランスに関係する人だとバカンスの話題になることはよくある。一度、フランス人は何週間にもわたる旅行などを退職後の楽しみにしないで、毎年できてとても人間的だと思う、と言ってフランス式のバカンスのよさを日本の友人に話したら「だからフランスは経済がなってないんだよ」って一蹴されたことがあった。

 その時はもやっとしたけど実際の日本とフランスの経済発展状況の違いとかまで調べたりしなかったから、私も本当のところどうなのか気になってた!

 エマニュエル: まず経済的な観点からこの質問について考えてみることにしよう。フランスの国内総生産(GDP)は日本より低いとはいえ、上位に位置しているけれど、国民がこれほど多くの有給休暇を取る中で、フランスはどうやって経済を維持しているのか。日本人の中には、フランスはこの夏季のバカンスのせいで世界経済から大きな後れをとっていると考えている人がたくさんいるだろう。

 確かにほかの経済大国と比べるとフランスは圧倒的に有給休暇が多く、年間5週間の休暇を取るのが一般的なので、これだけ競争が激しい世界で発展国として維持できるのは不思議だよね。

 17世紀の有名な詩人のジャン・ド・ラ・フォンテーヌが書いた『セミとアリ』という有名な寓話があって、夏の間にアリが一生懸命働いてセミはのんきに太陽を浴びながら歌っているだけなんだけど、冬がくると食べ物の蓄えがまったくなかったセミはアリに助けを求めるという話。日本人にとっては、バカンスを山ほど取るフランス人はこのセミのようなイメージなのかもね。

世界に先駆けて観光産業が発展

 くみ:同様の内容であるアリとキリギリスの話は日本でもイソップ物語などで有名だよね。怠けて遊んでばかりいると後で困るぞっていう戒めの話というイメージ。

 エマニュエル:でも実際のところはそんな単純ではなく、現実の経済はもう少し複雑なんだ。1936年にフランスでは初めて「有給休暇」が制定されて、夏季に長期のバカンスを取るのもこの頃から始まった。その結果、海や太陽を求めて今までにない規模の大量の観光客の沿岸地域への移動がみられるようになった。

 こうした大きな観光客の流れによって新たに観光という国の経済を支える産業が発展することになる。ホテルやキャンプ場、レストランにリゾート地でのスポーツセンター、美術館、特産物やお土産の販売などがたくさんの地域、とくに南フランスや大西洋岸地域などの沿岸地域だけでなく、アルプスやピレネーなどの山岳地帯も観光業のおかげで発展した。

 このことが経済的にどう重要かというと、以前は大した産業もなかったようなさまざまな地域に新たな経済活動と雇用の創出ができたことが挙げられる。そして国内での観光産業を発展させることで他国よりも先駆けて観光産業の専門化に成功できた。

 その例の1つが、世界規模で展開するホテルチェーンのアコーホテルズ。そしてさまざまなアクティビティやホテル、飲食施設が統合されたバカンス村を提供するクラブメッドなんかもその例だね。フレンチレストランが世界規模で発展するのも、長期のバカンスによって各地域の料理を知る機会が増えることがある。そのおかげでフランス料理の質が上がって発展し、その後海外でも評価をされることになるんだ。

 くみ:なるほどね! 考えてみれば当然の仕組みなのに、今まで気づかなかった! 日本でも、8月の子供達の夏休みやとくにお盆の時期はハイシーズンになって航空券もホテル代も何もかも高いイメージがもともとあったから、とくにフランスでバカンス期間のハイシーズンに物価が高くても当たり前だと思って、そこの利益の仕組みを考えてなかった。

 言ってみれば、日本中が帰省ラッシュで混み合うお盆1週間が、フランスでは少し緩和されつつも約1カ月にわたって続く、と考えればわかりやすいかな。その期間中、レジャー関連業界はつねにハイシーズンで潤っているというわけね。

ドイツはなぜ観光客が少ない?

 エマニュエル:第二次世界大戦後に、次第にヨーロッパの各国でも長期のバカンスが取り入られるようになってくると、どうなったと思う?

 ヨーロッパ各地の新たな観光客は自国ではなく、すでに観光産業が発展してたくさんの観光客の受け入れ態勢ができているフランスを訪れるようになったんだ。他国よりも一足先に観光産業が発展していたことがフランスにとっては大きな経済効果となったわけだ。働かない日々の「遅れ」から生まれた「進歩」はまだ終わってない。フランスは現在でも観光客の多い国の1つだからね。

 くみは、どうしてドイツは観光客が少ないんだろうって不思議に思ったことはない? ドイツだってフランスに劣らないくらい綺麗な景色や街並みがあるし、有名な詩人ヘルダーリンの詩を読めばドイツがどれだけすばらしい国かよくわかるよ。観光客は国の景色の綺麗さとはあまり関係していないということなのかな?

 くみ:ドイツもそうだし、スペインへ行ったときなども同じことを思った。フランスの有名な観光地にも見劣りしない風光明媚な場所がたくさんあるのに、その土地に関する日本語の情報はネット上でまったく出てこないとかね。その点、フランスは持っているものを世界にアピールして、世界中から観光客を集めてる。うまいな、と改めて思った。

 日本も観光立国などと頑張っているし、パリの街中でも日本旅行の宣伝を目にすることは珍しくないよね。実際、日本は大人気の旅行先の1つだけど、もっとさまざまな魅力をアピールしてもいいんじゃないかなと思う。

 エマニュエル:それじゃあ次はどんなタイプのバカンスの過ごし方があるかについて話してみよう。

 最も典型的なのはやっぱり海辺のリゾート地である南仏やブルターニュやノルマンディーの海岸地域で別荘やアパルトマンを借りて過ごすバカンスだね。

 次に人気なのが、ワイン街道を巡る旅。車でさまざまなワインの産地を巡り、試飲しながら気に入ったワインをお得な価格で購入する。ワイン街道はフランスではボルドーやブルゴーニュ、南仏、アルザスなど各地にあり、これもまたワインやシャンパンなどのフランスのアルコール製品の発展に貢献している。

地方の星付きレストランを巡る旅も

 くみ:日本も日本酒の文化があるから、酒蔵を訪ねる旅も珍しくないよね。

 フランスのワインやシャンパン、カルバドスなど蒸留酒は日本でも人気だから、愛好者は日本からの観光客であってもそういうツアーに参加する人は結構多いと思うし、私も日本からの愛好者と一緒にシャトー巡りをしたこともある。だから、そういう旅は日本人にとっても比較的なじみがある気がするな。

 エマニュエル:そのほかには星付きレストランを巡る過ごし方もある。まずミシュランやゴ・エ・ミヨのガイドなどであらかじめ評価の高い特定の地域のレストランをピックアップして、その地域で自然の中を散歩したりしながら何日もかけて目当てのレストランを巡って移動するんだ。

 僕もこれは何回かやったことがあるけど、地方の星付きレストランはパリよりも値段が安いところが多いので、割と気軽に入れるし、いろんな地方のおいしい料理が堪能できてとても楽しかった。

 くみ:これも美食家が多い日本人にとってはなじみやすいバカンスだね。パリを訪れる日本人観光客も、美食を楽しむのが大きな目的の1つである人は多いはず。まあでも、限られた時間の都合上、自然の中を散歩する楽しみまで組み合わせられる人は少ないかも。

 エマニュエル:それからさっき少し触れたけど、クラブメッドのようなバカンス村で過ごすというのも割とポピュラーだね。ここではさまざまなアクティビティが提供されて、家族同士や知らない人同士で知り合いになる機会が多いのが特徴かな。クラブメッドは世界中に展開していて、実は出会いの場としても利用されている。

 くみ:クラブメッドはフランスに来る前から知ってたけど、地中海クラブの略ってことは最近まで知らなかった。それに出会いを求めてそういうのに参加するバカンスもあるっていうのも知らなかったな。結構本気で交際相手を探す出会い系サイトもフランスは多いものね。日本でも需要はありそう。

 エマニュエル:「文学の旅」という、有名な作家にゆかりのある場所、例えば生家や住んでいた場所、美術館や資料館などを解説付きでグループで旅行をするのもある。もちろん作家だけでなく、画家や音楽家などいろんな芸術家を対象としたものもあって、これは芸術の発展と普及に貢献しているといえる。

 くみ:日本でよく目にするのは「フランスの世界遺産を巡るツアー」とかかな。あるいは「ピカソをたどる3都市ツアー」とかありそう。一時期よりは減ったのだろうけれど、日本人は団体で行動するツアー旅行にあまり抵抗がなさそうだから、そういうのも言葉がわかれば参加したいって人はいそう。

日本とフランスの決定的な違い

 エマニュエル:エコロジーなバカンスの過ごし方として、農場に宿泊して農場の仕事の体験や新鮮な農作物を味わったりと、都市で過ごすのとはまったく違う過ごし方を体験できるというのもある。

 くみ:これも日本にもあるよね。エコツーリズムや農泊体験なんてことも聞いたことある。期間や内容、環境が少し違うかもしれないけれど、結局バカンスの内容としては日本もフランスもそんなに変わらないのかもね。

 エマニュエル:このエコロジータイプのバカンスにはいろんな種類があって、例えばタラソテラピーや温泉、スポーツをして過ごすというのもある。

 くみ:そうだよね。内容は同じだと思って聞いてても、2週間滞在できるっていう長さが、まだ日本では得がたいかもね。

 エマニュエル:前回話した「日本とフランス『稼ぐ女性の服装』はかなり違う」でも同じような話をしたけれど、バカンスの話で言うと、フランスはまず国内で観光産業が十分に発展し、これに伴って国内規模の大企業ができた。海外では同様の産業が十分に発展していないこともあって、こうした企業は簡単に海外進出できたというわけだ。

 GDPに関していうと、国民が働かない日数による損失が、国民がバカンスに出かけることによって発展した観光産業の利益によって補われたと考えることができるかもしれないね。だから、さっきのフォンテーヌの寓話だと、セミが夏の間歌っていた歌が人気になって冬を過ごすのに十分なお金を集めたのでアリに助けを求めなくても済んだって感じかな。

 くみ:長いバカンスを取る習慣が根付いているからこそ、バカンスの過ごし方にみんなが敏感になって、内容が充実していき、やがては世界中のバカンス客をも引きつけるようになった、ってわけね。

フランス人のアイデンティティー形成につながる?

 エマニュエル:でもそれだけではないんだ。僕が思うに、夏の長期休暇による影響は、経済的だけでなく社会的な仕組みにも及んでいる。

 グローバル化が進む中、発展国の中で重要な問題の1つが、国民の一体感や、同じ国家の国民であるというアイデンティティーの確立だと思う。現在フランスでは徴兵制もないし、移民が多くさまざまな宗教観を持つ人々がおり、また海外に留学する学生や海外旅行の増加などで、なかなかそういった意識は育ちにくい。

 日本では、地形的にも島国であり他国と物理的に離れているし、学校で幼いころからこういった国民の意識を教育しているからあまり問題はないだろうね。フランスはこのような教育は学校でされることはないので、自分たちで住んでいる地域や宗教にかかわらず自分たちはフランス人なんだという意識を持つように努力しなくてはならない。

 僕の場合はだけど、バカンスがその役割を果たしていたんだ。バカンスの3週間という長い期間、自分の住んでいるところとは別の場所に住むことで、まったく知らなかったようなフランスの景色や異なるタイプのフランス人たちと交流することで、自国の魅力の幅の広さが理解できるようになる。

 幼いころからバカンスのたびに出会ういろんな人達や地域がすべてフランスという国なんだという意識を持つようになった。面白いことに、フランス人は3週間という長いバカンスでも海外旅行に行くよりかはフランス国内で過ごす方が圧倒的に多いんだよね。

 くみ:そう、私もそこは気づいてた。国内外含めてフランス人は、バカンス中はほぼ必ずどこかへ行くから、旅行慣れしてる。それも毎年数回バカンスで出かけるから、あちこち行ったり、友人と情報交換して、評判のいいところを新たに開拓するのも頻繁に気軽にできるよね。見聞も視野も広がるし、逆にいえば自分のいつもいる場所を客観的に見ることもできるしね。