blue deco design lab

東野圭吾の「手紙」~映画と小説

東野圭吾の小説は結構好きで、これまでに「秘密」、「白夜行」、「手紙」、「容疑者Xの献身」などを読んだが、ドラマ、映画化されているものが多い。「秘密」は感動的な作品であった為印象に残っているが、広末涼子主演で映画化されており、バスの交通事故をきっかけに妻と娘の体が入れ替わってしまう物語。市川拓司にも通じる切ない作品であった。「白夜行」は昨年綾瀬はるか、山田孝之主演のTBSでTVドラマ化されたが、東野圭吾の作品に共通して流れる独特の暗い世界観がうまく表現されていたように思う。小説「容疑者Xの献身」は昨年直木賞を受賞した作品で、シリーズ化されている物理学者湯川学が登場する作品。物理学者の湯川と、好きな人をかばって完全犯罪を試みる数学者の石神の間で、実に緻密で数学的な天才推理対決が展開され、そのディテールで読む者を物語にグイグイと引き込んでしまう。この湯川学シリーズの「探偵ガリレオ」がこの度10月からフジテレビの”月9”である「ガリレオ」として登場する予定だ。湯川役には福山雅治が扮し、新人女刑事役には柴咲コウ。また、毎回豪華ゲストが犯人役で登場するらしく、今から楽しみである(第1話のゲストは唐沢寿明)。

「手紙」の映画版は、僕の好きな沢尻エリカ主演ということで見たが、なかなか良く出来ていた。監督はTBSドラマ「ビューティフルライフ」などを手鰍ッている生野慈朗。武島剛志(玉山鉄二)は、高校3年生の弟である直貴(山田孝之)を大学に入れてやりたいと思う一心で必死に働くが、頑張って働き過ぎたことがたたってしまい、腰を悪くして働けなくなるという悲劇に見舞われる。それでも弟を何とか大学にやる為の金がほしかった兄・剛志は、ある老女が一人で暮らす家に侵入して金を盗もうと試みるが、運悪く帰宅した老女に見つかってしまい、結果老女を誤って殺してしまう。剛志は懲役15年の判決を受け、刑務所で刑を受けることとなった。しかし、この事件をきっかけに弟・直貴の人生は大きく狂ってしまう。直貴はことある毎に「強盗殺人犯の弟」という目で見られ続けて世間の差別を受け、さらにそれが何をやるにも足かせとなってしまう。仕事先でも兄が殺人犯、殺人犯の家族ということが知れ、いつもクビになる。住んでいるアパートからも追い出される。友人と組んでプロデビューしたお笑いコンビの仕事(原作小説では、バンドの設定)も解消することになり、そして恋人(吹石一恵)も離れて行ってしまう。刑務所に入った剛志との唯一のコミュニケーションが手紙であった。そんな残酷な日々を送っている直貴を、いつも陰で見つめていた女性、白石由美子を沢尻エリカが好演している。

無実な直貴への社会の差別ということよりも、殺人を犯した人間がどのように他の人々の人生に影響を及ぼすか、という点で加害者親族の立場から社会問題にも鋭く迫り、そしてその残酷で切ないまでの兄弟愛が見事に描かれている作品でもある。映画はわりと良く出来ていたとは思うが、兄がなぜ強盗に入り、殺人を犯してしまうような状況に陥ったのかなどの過程を小説のように、もう少し丁寧に描写していれば、二人の兄弟愛やラスト近いシーンもより感動が大きくなったのでは無いかという点がやや残念であった。
映画「手紙」でまた久しぶりに東野圭吾ワールドに感化された僕は、彼の最新作である「夜明けの街で」の単行本を今日購入した。これからじっくりと読んでみたいと思う。

コメント一覧

Aki
ご無沙汰しています。
最近のUpの速さと内容の充実度に驚きつつ、どこからコメントを書いてゆこうか悩んでいるうちに、後手に回ってしまった次第です。

実のところ東野圭吾はそれほど読んでおらず、名前は知っていたものの手を出すに至っていない作家でした。 ただTVドラマの「白夜行」を見、人間の描写に定評があるとの書評や私の知人の話に、とりあえず「手紙」を読んでみました。 実はその前後に「ハゲタカ」などのテーマの重い社会派小説を読んでいたため、「手紙」はわりとあっさり読めてしまいました。
白夜行のようなどうしようもなさはないものの、犯罪者を家族に持つ者の事実、内面をきちんと描いているところが、東野圭吾らしさなのだろうと感じました。 主人公が最後に兄にあてた手紙と、それを以って兄が気付いた内容は、どこかでハッピーエンドを信じて疑わない読者の期待を良い意味で裏切るものでした。 ただ冷静に考えてみれば、本当にその様な状況におかれれば至極当然の行為なのかもしれませんね。 切なくもどこかで家族・兄弟の温かみを感じる作品だったと思います。

映画のほうですが、時間の制限が有る以上、カットされる部分があるのは仕方ないかと思いますが、個人的にはバンド部分がお笑い倹lに代えられていた箇所は少々頂けませんでした。 ただし、最後に兄をネタにしたコントで言葉が詰まる、というシーンは最終シーンを盛り上げるには良い演出だと思いましたが。

antenna88さんの説明で今度の月9 「ガリレオ」が東野圭吾の「探偵ガリレオ」から来ていると聞き、早速読みましたよ。 短編集ゆえにこれまでの長編東野作品とは若干毛色が異なるように感じましたが、毎回殺人方法が超自然現象っぽくなっており、それに対する科学的説明もしっかりしているため、面白く読ませてもらいました。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「小説」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事