かわいいコケ ブログ I'm loving moss!

コケの魅力を広く知ってもらいたくて、情報発信中。
コケ、旅、山が好き。コケとコケにまつわる人やモノの記録です。

ジャゴケは春風のごとく。

2011-04-11 23:50:12 | コケをめぐる旅

▲ジャゴケ。キノコのように見えるのは雌器托。(4月鎌倉・朝比奈切り通しにて)


余震があったり放射線が気になったりで、
なかなか出かける気になれなかったこの1か月。


でも、もう辛抱たまらんゾ!ということで、
日曜日、都知事選の投票後に、いざ鎌倉へ。


鎌倉は絶好のコケスポットであり、
私にとってはパワースポットでもある場所。

とくに社寺仏閣などにはコケスポットが数多くあるが、
今回は昨年12月に「岡山コケの会」の観察会で訪れた
朝比奈切り通しを再訪することに。




▲朝比奈の切り通し。両側は大きな岩壁に道の両脇には小川が流れる。
 サイクリングや、トレイルランをしている人たちの姿も。



というのも昨年出会ったあのコケたちが、冬を経て、春を迎えたいま、
どう成長しているかこの目で確認したかったのだ。



ちなみに、各地でさまざまな種類のコケと出会うのも面白いが、
季節を通して同じ場所の特定のコケを見守り続けるというのもまた一興。

時間はかかるが、時季によって同じコケでも
実にいろんな顔があることがわかる。

そしてそれは、一時の出会いだけでは決して気づかない、
自分に注目してくれた、たくさん時間を費やしてくれた人だけに、
そっとコケが見せてくれる特別な顔なのである。



さて、話をもとに戻そう。


ジャゴケは雌雄異株(しゆういしゅ)だ。

ベタッとしているため、一見、どこからどこまでが
ひとつの植物体なのかさえわかりにくいが、
実は一つひとつがちゃんと独立していて、
雌株か雄株に分かれている。


春先になると冒頭の写真のように
受精した雌株の鱗模様の先から
キノコのような雌器托(しきたく)を伸ばす。



▲このキノコの縁についている褐色部分が、胞子体。中には無数の胞子が詰まっている。



5㎝から10㎝ほどの長い柄は、コケのわりには
ごく短時間でにょきにょきと伸びる。

そしてまた、胞子を飛ばし終わると今度は
あっという間に枯れてしまうというのだから、
まるで、この季節に街を通り抜けていく春風のようだ。


普段はなかなかお目にかかれない、
しかも春先というより春もたけなわの時期に、
こういう状態のジャゴケに出会えてとてもラッキー!



▲一足お先にお役目を終えた姉さん雌株たち。柄がたわみ始めている。


一方、春を迎えているのは雌株だけではない。

雄株はすでに新しい葉と共に
新しい雄器托(ゆうきたく)をつくり始めていた。



▲先端が新しい葉の部分。古い葉と比べるとあきらかに色が明るい。




▲アップにすると、新しい葉に抱かれるようにして盤状のものがあるのがわかる。
 これが雄株の雄器托。成熟するとこの部分は黒くなる。


昨年来たときとは、明らかに違う表情を見せてくれたジャゴケ。
寒かった冬を越え、着々と成長を遂げている姿が見られてとても嬉しかった。



●おまけ

鎌倉の前日は目黒川でお花見をした。

自粛ムードで例年より人は少なめなのだそうだが、
そんなことに関係なく、桜は今年も見事に咲いてくれた。


仲間の一人が福島産の日本酒を持ってきてくれて皆で飲んだ。
口あたりはスッキリ、後には鼻孔をくすぐる華やかな香り。


桜に日本酒。やはりこれも日本の春には欠かせない風物詩である。