ベイエリア独身日本式サラリーマン生活

駐在で米国ベイエリアへやってきた独身日本式サラリーマンによる独身日本式サラリーマンのための日々の記録

ミスティック

2018-04-16 10:33:26 | 生活
 ミスティックは、コネチカット州南部の古い港町だ。17世紀の港や造船所が残されたミュージアム、水族館などがあり観光産業が盛んなようだ。30代独身日本式サラリーマンは概して観光地で孤独を味わいがちで、訪れるのに多少の覚悟が必要になる。ミスティックの町はハートフォード市からは車で1時間程度で行けるので、日帰りでも十分楽しめるのであるが、孤独に散策し、孤独なまま帰路につくと車内で涙がちょちょ切れ、長屋に戻ったところでなお孤独な続き、枕をぐっしょり濡らすことになる。それは辛い。愚かなグーグルで町を調査すると、オイスターが食べられるバーが数件あったので、観光の後に現地で酩酊して孤独を紛らわし、そのまま一泊することにしたのであった。


この町の特長は以下のとおりだ。


①ミスティック
ミスティックは、ミスティック・リバーが大西洋に流れ込む河口の町である。狭い河口の上流は大きな入り江になっていて、川というより穏やかな湖に近い。そのため舟の係留に適していたのであろう。17世紀の入植以来、漁業、造船、水産加工の町として栄えたようだ。


②ダウンタウン
狭い河口には鋼製の重々しい跳開橋が架かる。橋より下流側は橋の開閉を待たずに海へと出られるため、小型漁船やレジャー船がびっしりと係留されている。橋の通りが小さな町のメインストリートだ。S字に曲がるメインストリートには観光客目当てのカフェやレストラン、土産物屋などが並ぶ小ぶりながらお洒落な通りで、歩いていて楽しい。中でもジュリア・ロバーツが主演した映画“ミスティック・ピザ”のピザ屋などが賑わっているが、30代独身日本式サラリーマンが楽しむことができるお店はあまりないので、雰囲気を味わう程度になるだろう。小一時間あれば暇を持て余す。


③ミスティック・シーポート
ダウンタウンからミスティック・リバー沿いを数分北上すれば、17世紀の港町をそのまま残したミスティック・シーポートがある。20ドルほどの高い入場料を支払い港町に入ると、古い町並みが復元・保全されており、少しだけタイムスリップしたような心持ちになる。かつてその油を燃料にするために乱獲されていたクジラ漁に関する博物館や、歴史的製法の鍛冶仕事を見学する施設など、中年男性が独りで興味深そうな表情で歩いていてもいたって普通な施設で安心する。また係留されたかつての捕鯨船の中を見学することもでき、ものの200年前に一攫千金を狙って鯨船に乗り込んだ男たちの匂いを嗅ぐことができる。ここはじっくり見れば半日時間を潰すことができる有用な施設であった。



④ホエーラーズ・イン
メインストリートの東外れにあるホエーラーズ・インは白とネイビー色のいかにも港のホテルといったデザインであり、そこで一泊することにした。1階はバーにもなっている。運よく予約もなく宿泊したが、120年の歴史がある人気のホテルだということだった。ミスティックシーポートや水族館周辺には多くの宿場があるが、ダウンタウンにはこのホテルしかないようなので、本気で泊まりたい独身日本式サラリーマン諸氏は予約した方がよいようだ。



 ミスティックの夜。通りは静かだがお店の中はどこも賑やかだ。イタリアンレストランやバーは暖かな人の輪で満たされており、30代独身日本式サラリーマンにお似合いなうらぶれた酒場はない。オイスター・クラブというお店に何とか入り、賑々しいバーのカンターで独りスマートフォンをいじりながらオイスターとハマグリを堪能しました。人生100年時代と言われている。歩けなくなっても、耳が聞こえなくなっても、お酒を呑めなくなっても、お金がなくなっても、記憶が薄まってきても、数少ない友が先に死んでも、それでも笑って過ごすには、もうきっと思い出し笑いしかない。たとえその瞬間がつまらなくても、老後に思い出して笑うために今のうちにできるだけ材料を記録しておくのだ。とはいえさすがに水族館は行けませんでした。