ベイエリア独身日本式サラリーマン生活

駐在で米国ベイエリアへやってきた独身日本式サラリーマンによる独身日本式サラリーマンのための日々の記録

餃子棲

2018-04-22 14:28:49 | 食事
 餃子棲はカナダトロント市にある中華料理食堂だ。トロント市は世界中のあらゆる国の人々が暮らしており、初めて訪ねると自分がどこの国に来たのか戸惑うほどだ。筆者はかつてちょっとした出張でトロントに足を踏み入れる機会があったが、そこではソマリア人やスリランカ人、さらにはモーリシャス人、アルバニア人などといった世界でも数百万人しかいない貴重な人々と会うことがあった。ワーキングホリデーなどで日本の女学生もわんさかとおり、日本のような居酒屋も沢山あって、“ないものを探す方がむつかしい”世界がある。今回筆者は陸路でカナダ入りし、“しばらく食べていないものを食べに行くツアー”を敢行した。そこで見つけたのがこの餃子棲だ。


このお店の特長は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。


①アクセス
ダウンタウンのヤングストリートから直角西へ20分ほど歩くと、路面電車が走るスパデイナ・アベニューと交差する。この通り界隈がチャイナタウンであり、アジア系の人々で満ち満ちている。中華料理屋や商品が歩道にはみ出るように並べられた雑貨屋などが立ち並び、いかにもな中華街な雰囲気はあるものの、通りの落書きや貼られているポスターなどに妙な前衛的な雰囲気があり、サンフランシスコの中華街とは少し様子が異なる。餃子棲もこのスパディナ・アベニューにあり、多国籍な雑多なお店が並ぶケンシントン・マーケットへ入る路地との角に面している。隣に味千拉麺があり、懐かしい気持ちにさせられた。


②外観
赤い大きな看板に店名が白抜き行書体で書かれていて、目立つので見落とすことはない。表のガラス窓の中では白い調理服にマスクや帽子を被った中年女性が数人でせっせと餃子の皮にネタを詰めており、その様子が通行人から見えるようになっていて、時折写真を撮る人々も見られた。とにかく餃子を売りにしているお店なのだ。表にあったメニュー看板には“焼き餃子”があるとのことであった。北米大陸に来て以来がっかり焼き餃子ばかり食べてきていた筆者は、期待を胸に店に入った。



③中の様子
奥行きのある店内は簡素な卓が並び、サンマテオの北京麺食館と同じ雰囲気を感じる。壁には中国風の化粧を施した男の面がいくつも飾られている。また、飾られている掛け軸には騎馬の文字があり、やはり蒸し餃子が美味しい北京麺食館と同様に北方騎馬民族系の人々のお店なのだろうと予想された。餃子のネタは地下で調理しているらしく、男たちがネタの入った大きなビニル袋せっせと階下から表の餃子作成場へ運んでいる。



④メニュー・味
豚肉とニラの焼き餃子と、海老の蒸し餃子、そして白米を注文する。15分ほどで運ばれてくる。プラスチックの安い食器も北京麺食館と同じだ。1皿12個づつの餃子を嬉しく平らげた。12個の焼き餃子は仕上げにフライパンの中に投入されたであろう片栗粉液の薄皮で繋がって出てくる。皮はパリパリ、ネタはジューシー。日本で“おいしい”とされている焼き餃子そのもので、最初の1個を口に投入したときには感動で箸が止まり、『うまい!』と叫ぶところであった。蒸し餃子も美味しかったが、これは北京麺食館と互角であろう。



⑤酒
このお店にはどうもお酒は置いていないようだ。というのもメニューに酒類はなく、グーグルの写真にも酒を呑む人々はいなかった。筆者は店を出た後になって、夕食時に再び来店しビールと焼き餃子を愉しもうかとも思ったのだが、酒類の有無を確認し忘れたので止めることにした。「ここ、お酒あります?」「ウチハ酒オイテナイネ」「あ、そうですか。じゃあ出直します」というやりとりをするのは気後れするものだ。


白米を注文したのだが、最後まで出てこなかった。中国の人々にとって餃子は主食であり、米と食べるなどという行為は関西人のお好み焼き定食のようなものらしい。注文時にやや怪訝な顔をされた。餃子で腹がいっぱいになったし、「あの・・白米来てないのですが」「アレ。忘レテイタネー、今カラツクルネ」「いや、もういいので値引きを・・」というやりとりが面倒なので留め置いた。この餃子を食べられただけで、トロントへ来た甲斐があったというものだ。いつかトロントにゆかりのある人と会ったなら、「トロントといえば何といっても餃子ですね」と言うことにした。