ベイエリア独身日本式サラリーマン生活

駐在で米国ベイエリアへやってきた独身日本式サラリーマンによる独身日本式サラリーマンのための日々の記録

石油ストーブ

2018-02-06 15:14:10 | 生活
 石油ストーブとは、灯油を燃料とする暖房器具のことである。コネチカット州の冬の寒さは西海岸のベイエリア30代独身日本式サラリーマンには想像できまい。月別気温は青森県の十和田周辺とほぼ同程度であり、1月2月の平均気温は氷点下2度、最低気温はマイナス10度を下回ることさえある。だが生活のほとんどを室内や車内で過ごすので特に不自由がないのが実情だ。長屋の室内は暖房を付けていなくても下のヒトや上のヒトの余熱でそれなりに温められているし、二重窓になっていたり、サッシには隙間テープが張られていたりとしっかり寒冷地仕様になっている。それに部屋ではだいたい布団にくるまってじっとしているので、補助暖房器具を必要としないのだ。それでも週末に暇を持て余し、ホーム・デポで何か探し物がないかと探していたときに、山積みになった石油ストーブを見て“使ってみよう”と思い、買い求めたのであった。以下はその報告です。


この製品の特長は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。


①ケロシン・ヒーター
石油ストーブはオイル・ヒーターではなく、ケロシン・ヒーターと呼ぶ。なんだか風邪薬のような響きを持つ“ケロシン”は、ナフタレンやメタンなどのような有機化合物の名前であり、石油から精製される灯油の主成分なのだそうだ。米国では灯油のこともケロシンと呼ぶ。ケロシンは発熱量・揮発性・引火性などの諸条件から飛行機の燃料にも使われているとのことだ。小学校の教室に置かれたような、部屋に置いて可愛い対流型のケロシン・ヒーターは150ドル程度で売られている。


②ケロシンを入手する
ケロシンはホーム・デポで1ガロン入りの缶が10ドルで販売されている。これは高い。“さては失敗したかな”と思うも、ハードウェア・ショップというものに初めて入って調査したところ、タンク持込みで1ガロン6ドルで購入可能であった。


③さっそく部屋を暖める
長屋に戻り、ヒーターを組み立ててベランダで通称“シュポシュポ”を用いてケロシンを入れる。そしてヒーターを居間の中央に据える。万一の際に長屋の住民に迷惑をかけぬように火災報知器のリセットボタンを確認し、ベランダの窓を開けた状態で点火する。着火の瞬間に少しだけ黒煙が舞い上がるが、ダイヤルを回して芯のでしろを調整すれば炎は安定し、部屋が熱され始める。北京原人が火を用いたのは遥か昔だが、未だに火を扱うのは緊張感がある。30分も稼働させれば部屋は半袖で過ごせるほどに温まる。

④湯を沸かす、燗をする、するめや鱈チーズなどの乾物を炙る
ケロシン・ヒーターの熱を使って“湯を沸かす、燗をする、するめや鱈チーズなどの乾物を炙る”のような粋な楽しみを味わうことができるのが、30代独身式サラリーマンにとっては嬉しく、昨今の暖房器具では味わえない深い悦びがある。熱でぐらぐらとゆらぐ上部の空気や、ヤカンの中で少しづつ沸点に近づく湯が「ジ・・ジジ・・・」と音を立てる様などが孤独な長屋に温度以上の温かみをもたらす。


 とはいえ毎度の給油や不定期の芯の交換、一酸化炭素中毒による安楽死への警戒などと気を遣う点が多いので、ものぐさな30代独身日本式サラリーマンには不向きな器具だ。正直“失敗したな・・”と思いグッドウィル行きも考えたが、稼働に電気を必要としないことから、天変地異などで電力がストップした際の非常設備として灯油缶と共に置いておくこととした。これで大災害が起きても部屋で悠然と熱燗を作り、炙りスルメを齧り、安楽死することができる。西部邁氏や有賀さつき氏のように心配されたり応援されたりすることを避けて颯爽とこの世を去る人々に何か格好良さを感じてしまうが、もともとそんなに心配されたり応援されたりする人を持たない30代独身日本式サラリーマンには縁のない死に様だと気づき、精一杯生きようと思いました。