夜の中

夜の街をあてもなく自転車で走り回ってみる。

いつか入ったラーメン屋さんから、いいにおいがしているけれど、あそこのラーメン、ちょっとしょっぱかったな。
古い商店街の中も走る。アーケードについた蛍光灯が光っている。夜にはこんな感じなのか。さびしい夢の中にいるみたいな錯覚。
路地も走ってみる。もうあんまり人はいない。
お気に入りのコーヒー屋さんはまだ開いているけれど、あんまりコーヒーっていう感じでもない。あんまりのどかわいていないんだ。

駅から電車に乗るという手もあるけれど、それやると、多分、今夜のうちには戻ってこれない。

ラブホテルに泊まるくらいのお金は持っている。でも、まだひとりで入ったことはない。お風呂も大きいし、格安だと思うんだけど、まあ、別に風呂にも興味ないし。
なにもない道を走る。常夜灯が道の果てまで並んでいるところを見るのは好きだ。

暑くも寒くもないけれど、しっとりとした夜気がまとわりつく。
神社の境内で寝込むほどの根性もない。だいたい、このごろは、どこでもちゃんと鍵がかかっているし。

しかたないから、おうちに帰って、物置の中でマットレスをひっぱり出して、寝てみたのでした。床下換気扇？の音がするなあ。