読書と映画をめぐるプロムナード

読書、映画に関する感想、啓示を受けたこと、派生して考えたことなどを、勉強しながら綴っています。

「犯罪の回送」(松本清張著/角川文庫)

2006-05-16 18:46:16 | 本;小説一般
清張の晩年、1992年の作品。1909年12月21日現在の北九州市小倉に生まれ、42歳で遅咲きの作家デビュー、以来40年の執筆人生。1992年8月4日死去。本書解説には「巨匠残した最後の推理作品」とあるが、その後、「隠花平原」(1993年、新潮社)、「神々の乱心」(1997年、文藝春秋)が出版されている。

登場人物は、北海道北浦市長・春田英雄(52)、先妻・矢野登志子(45)、後妻・美知子(31)、春田英雄の実弟・雄二(47)、市長秘書・有島安太郎(31)、野党市議・早川準ニ(60過ぎ)、警視庁・田代警部(31)他。北浦市の港湾拡張計画をめぐるミステリー。

思えば松本清張の小説を読んだのはおそらく初めてだ。映画化されたものでは「砂の器」(1961年、光文社)、「わるいやつら」(1961年、新潮社)「迷走地図」(1983年、新潮社)を観ている。ヒッチコックと清張の映画は今見ても現代ハリウッドものと比べても全く遜色がないと思う。

それにしても、清張の前半生は全く厳しいものだ。「1924年板櫃尋常高等小学校を卒業し、川北電気企業社小倉出張所の給仕となり、1927年、出張所が閉鎖され失職。小倉市の高崎印刷所に石版印刷の見習いとして採用され、さらに別の印刷所に見習いとして入る。1929年、仲間がプロレタリア文芸雑誌を購読していたため、「アカの容疑」で小倉刑務所に留置され、父によって本を燃やされ読書を禁じられた」。

「1931年に印刷所がつぶれ、高崎印刷所に戻ったが、嶋井オフセット印刷所で見習いとなり、その後みたび高崎印刷所に戻り、内田ナヲと結婚。だが、印刷所の主人が死去したために将来に不安を感じ、1937年から自営。朝日新聞社九州支社の広告部意匠係臨時嘱託となる」。

「1943年に正式に社員となるが、教育召集のため久留米第五十六師団歩兵第一四八連隊に入る。翌年六月に転属となり、衛生兵として勤務。朝鮮に渡り竜山に駐屯、一等兵となった。1945年に転属、全羅北道井邑に移り、六月に衛生上等兵に進級。敗戦は同所で迎えた。帰国後は朝日新聞社に復帰」。戦後になってやっと生活が落ちついてくる。

「究極の目的は人間存在の深奥を見据えることであった。普遍的なテーマによって人間を描き、歴史・社会の闇に迫ろうと試みた一作家の孤独な営為」(松本清張記念館HP)は、彼の前半生の苦境から生まれたものなんだろう。


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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
迷走地図 (MUSK de M.)
2006-07-28 20:45:47
難しい事は

解りませんが

映画『迷走地図』は

1000回観ても

面白い映画です。



でもレンタル屋さんに

伺ったところ

『この作品は…ビデオになっていませんね』と

言われてしまった(;-_-+



この作品との出会いは

勝新太郎さんが

亡くなった際

追悼番組で放送された際

ビデオに録画しまして…………

でも…………

最後まで録画

出来ませんでした。



ぁヾ~~失敗(;´_`)



勝新さんの総理を目指す予\算の作り方。

岩下志麻さんの「総理夫人の座」欲しさに自分を捨て、最後に得たモノは…。

渡瀬恒彦さんの秘書ぶり。

いしだあゆみさんの夫を守る妻。

松阪慶子さんの美貌と愛人ぶりは世の男性はイチコロです。

…………また、観たくなってきた…………観ょ
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