読書と映画をめぐるプロムナード

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現代アメリカ文学者の青春の咆哮、「熊を放つ(上)」(ジョン・アーヴィング著/村上春樹訳/1968年)

2010-01-16 08:57:33 | 本;小説一般
<原題>''Setting Free the Bears''

<目次>
(上巻)
第一章 ジギー
第二章 ノートブック

(下巻)
第二章 ノートブック(承前)
第三章 動物たちを放つ

<主な登場人物>
ハネス・グラフ、ジークフリード・ヤヴォトニック(ジギー)
<第一章>
ファーバー(バイク整備「ファーバーの店」店主)、ヒンリー・ガウチ(アジア・クロクマの捕獲者)、カルロッタ、ワンガ(ヒーツィング動物園で出会った女の子たち)、ギャッペル、フラウ・フライナ夫妻(農家)、フラウ・エルトル(旅館「フラウ・エルトルの昔なじみ屋」女将)、ガレン(リンゴ園で出会った女の子)、フラウ・トラット(ガレンの叔母。旅館<ガストホフ>聖レオンハルト・ヴァイトホーフェン経営)、ヴィンディッシュ(りんご園経営者)、ケフ(トラクター運転手、ヴィンディッシュの使用人)、

<第二章>
<動物園偵察>
O・シュルット(動物園の夜警)

<ジークフリード・ヤヴォトニクの自伝 精選抜粋編>
ヒルケ・マータ(ジギーの母親)ツァーン・グランツ(ヒルケの最初のボーイ・フレンド、ジャーナリスト、政治家志望のガラス工芸職人、タクシー運転手)、ジギーの祖父(図書館長)、祖母、クルト・フォン・シュシュニク首相(実在のオーストリア第15代連邦首相)、アルトゥル・ザイス=インクヴァルト(同じく、第16代連邦首相)、ヴィルヘルム・ミクラス(同じく、大統領)、エンルスト・ヴァイツェク=トルマー(養鶏農夫、鳥男、鷲男、「愛国の士」)、カトリーナ・マレク(女優)

ヴラトノ・ヤヴォトニック(ジギーの父、19191年生まれ)、ドラツァ・ミハイロヴィッチ(ドラジャ;実在のユーゴスラビア王国の軍人)、スリヴニカ一家(テロリスト集団ウスタシの活動に参入;長兄ビジェロ、トドール、双子のガヴロ、ルトヴォ、妹バーバ、ユリカ、ダブリンカ)、ゴッドロープ・ヴット(ドイツ軍オートバイ部隊バルカン4の偵察隊長)、ツィヴァナ・スロボド(セルビア人、ヴットの愛人)


本書は、現代アメリカ文学を代表する作家ジョン・アーヴィングが1968年に書いた処女作で、1986年に村上春樹さんが翻訳したことで日本でも話題になったもの。ここでは、2008年に刊行された「村上春樹 翻訳ライブラリー」から。

まず、全体の構成を紐解くと、第一章は、1967年、オーストリア・ウィーンの市庁舎(ラートハウス)公園で本書の主人公ハネス・グラフとジークフリード・ヤヴォトニック(ジギー)との出合いとある計画が描かれます。

第二章は構成が変わり、ジギーの「動物園偵察記」と「ジークフリード・ヤヴォトニクの自伝」が交互に展開することになります。「動物園偵察記」は6月5日の午後1時20分から時系列で書かれ、6日の午前3時から午前6時45分までは15分刻みで綴られ、7時30分で終わります。

一方、<ジークフリード・ヤヴォトニクの自伝 精選抜粋編>は、1938年を中心に1935年5月30日~1964年夏までが綴られています。この記述には第二次世界大戦前後のオーストリア、ユーゴスロヴィア、ドイツ軍に対抗するセルビア人将校による武装組織チェトニックなどの歴史的事実が背景に描かれます。

そして第三章は、この二人の計画が実行される展開となっています。

1942年3月2日、合衆国ニューハンプシャー州エクセターに生まれた生粋のアメリカ人である著者が、なぜオーストリアが舞台の本作を描いたのかという疑問がわきましたが、アーヴィングは1963~64年、ウィーン大学に学んでいたんですね。

本書を一言で述べるとすれば、オートバイと動物園にまつわる青春物語といったところでしょうか。ここに登場する、オートバイは、イングランドで生まれた世界で最も古いオートバイメーカーのロイヤル・エンフィールドであり、動物園は世界最古のシェーンブルン動物園がモデルと思われるヒーツィング動物園であり、この動物園の象徴として、オリックスとアジア・クロクマ(ツキノワグマ)が登場します。


<Royal Enfield: Homepage>
http://royalenfield.co.jp/index.html


<オリックス (動物) - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9_(%E5%8B%95%E7%89%A9)


<クロクマ - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%82%AF%E3%83%9E


(続く)


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