正月休みを利用して訪れたドバイは、私にとって初めての中東地域でした。UAE(アラブ首長国連邦)はその名の通りアラビア半島 アラビア湾(ペルシア湾)に面した地域の7つの首長国からなる連邦国家で、ドバイ首長国はその中でも世界的な金融、観光都市として急速に発展した近代都市です。 新聞やテレビで目にする程度の知識しか持たず、ネットで航空券とホテルの手配だけ終え、本当に思い付きのドバイ訪問ですが、羽田から直行便(エミレーツ航空)で12時間、韓国、日本を含む33か国は30日以内の滞在ではビザ取得も不要で思いのほか手軽な渡航でした。
現地時間午前9時にドバイ空港に到着、日本との時差は5時間です。基本的にはドバイの街の雰囲気を肌で感じたいという旅ですが、初日だけはとやや離れた砂漠のホテルを予約しました。タクシーでホテルに向かいながら、パキスタンからの出稼ぎという運転手にドバイ事情を聞きました。一月の今の時期が、気候的にはもっとも過ごしやすいということから始まり、子供を残して妻と働きながら仕送りしていること、ドバイは働きやすいがインフレで年々物価が上昇していること、税金は一切かからないが、医療費や福祉に関しては2009年から新健康保険制度がスタートしたものの外国人には不便が多いことなどいろいろ話してくれました。人口約230万のドバイは、この運転手のような海外労働者が大部分で、自国民は二割にも至りません。しかし、徹底した自国民優遇策のなか、1970年以降 石油資源の枯渇を見越し、先見的に多角的産業政策を強力に推し進めてきた結果、一人当たりのGDPは日本とほぼ同レベルの上、GDPの内訳も97%が非石油セクターで占め、まさに中東において脱石油依存の成功した例です。反面、職場と報酬は与えられても、国籍の取得は困難であり、そこには高い越えられない壁があります。運転手も私が日本から来たと知ると、しきりに自分は以前から日本で働きたと考えているがどう思うかと尋ねられました。正直 彼の今の状況より良いと言えるか答えに迷いました。
夕方 果てしない砂漠の地平線に沈む太陽を眺めると、その美しさに暫し言葉を失います。しかし、この広大な自然の前に人間はいかに無力であり、ここに住む人間から多くのものを奪い、また与えもしたのでしょう。その一つが石油であり、知恵だったのかもしれません。