アマオケ活動記ブログ版

所属しているアマオケ(群馬シティフィル)での活動を中心に演奏会案内や練習状況など零します。

『新編 音楽家の社会史』西原稔著・音楽之友社発行 

2011年02月06日 | Weblog
先日、練習の前に前橋の紀伊國屋書店に頼んでおいた本を取りに行って、ついでに探してる本があったので書店員さんにお願いして待ってる間、サービスカウンターの近くが音楽関係の棚で、なんとはなしに見ていたら面白そうな本があったので、つい買ってしまった。

音楽選書オルフェ 新 音楽家の社会史 (オルフェ・ライブラリー)

それで読み始めたらやっぱり面白かったので一気に読了してしまった。
当時の演奏会は経費等が演奏者の負担で、無名の演奏家が演奏会を持つにはどれだけの苦労があったか(それは今も一緒か)。
何がお金かかるって当時は明かりが蝋燭だったわけだけど、夜間にコンサートとなった場合に蝋燭代や松明代にどれだけの費用がかかるか、それも全部演奏者持ち;
貴族たちにチケットを送って来て貰うにしても、先に送るからお金の回収もままならない。
楽譜の出版の契約でお金を貰うにしても、出版後の海賊版の横行を防ぐのも大変、さらには編曲も勝手にされる。元の権利は守られてない。
当時の演奏会では常に斬新な新曲を求められ、演奏者の演奏技術もままならないまま指揮を振らねばならない。聴衆はコンサートを社交の場とするので演奏そっちのけでお喋りに夢中だったり…などなど…
産業革命後は市民が徐々にプチブルになったわけだけども、貴族だけでなくそうした市民も演奏会に繰り出すようになる。聴衆の興味の巾が大きくなるからプログラムはごったまぜ、そのために演奏が長時間に及ぶようになった…。
ベートーヴェンは当時から大スターだったわけだけども、以外にしたたかで楽譜出版の契約も蔭で数社と並行交渉していたり、貴族への献呈も同じ曲を複数にしちゃったり(献呈することでお金が入ってくる)など案外しっかりしていたらしい。
それでもお金の苦労は絶えなかったみたいだー。
モーツアルトに至っては晩年はかなり窮乏したみたいだし…この辺りは映画なんかにもなってるな…
演奏家としても大スターでご婦人方に大人気でお金に苦労しなかったと思われるリストは別の面でけっこう苦労が絶えなかったみたいで、単に自分と会ったと人に言いたいがために訪ねてくる大勢の人たちに午前中の時間を割かれたりなどしてたわけだ。
芸術の向上や芸術家の社会的位置のことを考えて社会に苛立ちを感じていたみたいで、自分以外の無数の恵まれない音楽家などのことも常に視野に入れて色々文筆活動などもしていたとか。才能があるのに評価に恵まれなかった音楽家、たとえばベルリオーズなどを取り上げて光を当てたりなど、作曲家としてだけでなく社会的に音楽史の中で果たした役割が大きかったのだな~。
前に「前奏曲」をやった時に感性的な作曲家というよりは観念的で知性派という印象を持っていたけども、なるほどと思った。

メンデルスゾーンも作曲家としてだけでなく指揮者としてバッハの再評価をしたり、ごたまぜのプログラムではなく方向性を持たせたプログラムを組むといったことなど、音楽活動で果たした役割が大きかったみたいだ。

こうした現代まで名前が残る人達の蔭で無名のまま消費されていった無数の音楽家がいたのだなあ…ということを改めて感じ入ったりもした。
それは現代だって同じ構造なのかもしれない。版権のことで揉めて裁判沙汰にもなって敗訴したというベートーヴェンの話もあったが、芸術家が受けるべき恩恵がきちんと当人に返っていかない世の中というのはいつの世も同じ。
現代でこそ若干整備されているとはいっても文化的後進国などはよその国の文化をパクッてコピーして平気で利益を貪っていたりなどもある;
日本だって昔は著作権の意識が低かったからそんなに人のことは言えないが、現代社会では著作権を守るという意識が世界的には広がっているわけなので、ちょっとだけ変えてこれは自分とこのオリジナル!と言い張って利益を得ようとする某国などは自国民がもう少しそういう国内の動きを恥ずかしいと思わねばなるまい;

21世紀の日本で一時期巷間に溢れまくった音楽でもそのどれだけが世紀を隔てて残るだろう。クラシックに限らず、ロックでもたとえばいつまでも古くならないビートルズやクイーンの音楽これらは来世紀も残るだろうなと思ったり。
あんだけ溢れかえったK室哲也の音楽は残るかってどうかなー残らんよなー(ファンの人ごめんね;)と思ったり。
でもベートーヴェンやモーツァルト、リスト、シューマンといった人達はとりあえずは生きている間に作品が評価されてその上で世紀を経て残ってるのだからまだいいよね。
人によっては生きている間に評価されなかった作曲家だってけっこういるものね。
もしくは、ものすごいいい演奏家もいたのかもしれないが、脚光を浴びる機会に恵まれずに当時も今も知られないまま消えていった…なんてこともあるのかもしれない。

・・・・まあそんなもろもろのことを色々考えさせられた本でした。
市民の生活の中の音楽の存在がどうだったか、当時の音楽に関する出版状況は?音楽家の生活は?などなどが整理されて書かれていて何かと興味深い内容なので、興味のある向きは是非ご一読をどうぞ^^