原発と放射能の本 12 黒田和夫さん著『17億年前の原子炉 ー核宇宙化学の最前線ー 』ブルーバックス、講談社、1988年(昭和63年)2月20日第1刷、新書版、204ページ、定家580円
本を片付けていたら、やっと探していたこの本が出てきました。
戦後、アメリカに渡って核宇宙化学を追究し続けた著者の「謎解き」本です。推理小説のように、いや推理小説以上におもしろいです。ただし、化学式や元素のデータを自分で考えてみる人には、です。
「超新星カリフォルニウム254」仮説、「プルトニウム244」の謎、ゼノンの謎、「17億年前の天然原子炉」の謎…などなど。
とくに黒田さんは、むかし地球に天然原子炉が存在した可能性を理論的に証明した論文を書き、その後に、アフリカのガボン共和国のオクロ鉱山のウランが、17億年前に天然原子炉だったことが実証されました。
いまはウランの中の、核分裂しやすいウラン235は0.7%ですが、ウラン235は半減期が短いので、むかしはもっと多量にありました。20億年前にはいまの10倍近くの6%ですから、原子炉級の濃縮ウランです。
それが、生命により酸素が発生したことで酸化ウランになり、水で堆積して、一定の量が地層に蓄積したことで「天然の原子炉」となる条件ができたのです。
つまり、シカゴでフェルミさんが創った黒鉛原子炉は「地球最初の原子炉」ではなかったのです。