戦争と平和 17 戦争と平和の本 4 計見一雄『戦争する脳 破局への病理』平凡社新書、2007年
238ページ、定価本体760円。
「戦争と平和の本」は「本と映像の森」とは別系統にして、この「戦争と平和」で紹介していく。
この本で今日、紹介するのは、「第1章 否認という精神病理現象」だけです。
「あってはならないこと」が「存在する」のを予想して対応したほうがよい。「あってはならない」不祥事が起きて、謝っている会社や団体の責任者はたくさんいる。
著者は言う。「リスク・マネージメント」ではなく「ダメージ・コントロール」でいい。
リスク・マネージメントは経済学の投資の安全性をいかに確保するか、という理論だった。(p29)
よくあることは「肉体」を否認する、「怒り」を否認する。
「優しさ」「いやし」の流行は著者は願い下げである。
著者はそれが「あるぞ」というところからスタートする。「ないほうがいい」ことを「ない」と間違えてはいけない。「ない」からスタートすると「あってはならない」になって現実を否認する「あってはならないことは存在しない」にまでいきつく。
「航空機事故」は「あること」であって、だからアメリカなどではパイロットは訴追しない。
戦後日本で最大の否認の対象になったのが自衛隊である、と著者は言う。それはほんとうのことである。では、自衛隊に対していまどういう態度をとればいいのか、は別論で。
誤解しないで欲しい。自衛隊は軍隊ではないと否認したのは左翼と共産党ではない。自民党政府だ。だからと言って左翼の側に錯誤がなかったのではない。このことはまた述べたい。
とにかく全体として興味深い本だと思う。
大日本帝国海軍とからんで、もう1度、この「ダメージ・コントロール」を話題にすることがあると思う。