昨年11月、放射能に汚染された土が環境省に送りつけられ、処理に困った同庁総務課の職員が、自宅に持ち帰って近くの空き地に捨てたというニュースがありました。この本を読みながら、これを思い出しました。
現役の原子力科学者が、福島の原発事故を防げなかった責任に言及しつつ、現行の原子力行政のいい加減さを告発しています。
福島の原発事故は人災。
従って、これを起こした責任者は、厳重に処罰されなければならないし、これによって生成された汚染土壌や瓦礫は、すべて東京電力に送りつけるべしと主張します。
一方、原発の持つエネルギーの巨大さと効率の悪さ、トイレのないマンション状態の不合理さについても詳述されています。
広島の原爆は、ウラン800グラムを燃焼させてあの惨事を引き起こしましたが、現在、1基100万KWの原発は、1日に3kgのウランを燃やしています。つまり、1基当たり1日、広島原爆4ヶ分のウランを燃やしながら、その核廃棄物(死の灰)を格納容器に溜め込んでいます。
それが今回の事故で、原爆100ヶ分を超えるセシウム137が福島県を初め世界中にばら撒かれたといいます。
また、原発の効率は30%で、残りの70%は海水を温めつつ棄てられています。加えて、核燃料の「崩壊熱」は、運転を停めても発生しつづけるので、冷却を止めるわけにはいきません。この熱量は、100万KWの原発で約21万KWくらい(1KWの電熱器21万個分)にもなるといいます。
加えて筆者は、安全神話を信じて騙された国民には、騙された責任があると主張します。そして、今、原発廃止に向けて声をあげることこそ、その責任を全うする道だと説きます。ご一読をお勧めします。