入院生活も案外閑だということがわかった。
勿論、手術を受けた日と翌日くらいは、傷口は痛むし気分もすぐれないから少々、いじけた気分になるが、それ以外の日々は閑をもてあました。
幸い、今回入院した病院の各階のラウンジには、文庫本や文芸春秋やオール読物などの月刊誌の他、各種週刊誌などがストックされていたから、それらを漁っては読み、まるで自宅さながらの生活であった。
この間、長編では葉室麟氏の掲題作の他、湊かなえ氏の「少女」を通読した。どちらも「死」がテーマとなっていて、病気療養中の身に適した書とは言いがたいが、いずれも我慢強く最後まで読んだ。
物語~鎌倉幕府三代将軍「源実朝」は、建保7(1219)年、雪の振る鶴岡八幡宮で暗殺される。下手人は、二代将軍源頼家の子「公暁」だが、問題は、部下に預けた実朝の首が行方不明になるところから始まる・・・
この小説は同氏の初期の作品で、まだ本格的な葉室ワールドを形成するに至っていないから、筋立てにしても記述にしてもあまりスムーズとは言いがたい。
加えて、鎌倉幕府と時の朝廷との複雑な関係が頭に入っていないから、人物を特定するのに頁を前後するなど物語にどっぷり浸かることができなかった。
現在放映中のNHK大河ドラマ「平清盛」が低視聴率に悩むのも、時代背景が視聴者によく理解されていないことも一因ではなかと思われる。